模試の偏差値と点数の見方──何点で偏差値60になるかは平均点で変わる

模試の偏差値と点数の対応を示した図解。得点の物差しと偏差値の5段階の帯を上下に並べ、平均点の位置が偏差値50にあたることを示している。日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザーの藤原 誠一が解説。

PR|本記事は特定の事業者の取材協力のもと制作しています。掲載情報の比較・評価は著者の独自判断によるものであり、掲載料が記事内容に影響を与えることはありません。詳しくは運営者情報をご覧ください。

答え模試の偏差値は、その回の得点が平均点からどれだけ離れているかを表した数字です。平均点ちょうどなら偏差値50、平均点を上回れば50より大きく、下回れば小さくなります。何点で偏差値がいくつになるかは、その回の平均点と、受験者の得点がどれくらい散らばっているかで決まります。だから同じ点数でも、受ける模試が変われば返ってくる偏差値は変わります。

「62点でした」と点数だけを覚えて面談にいらっしゃる中学生が、毎年何人もいました。偏差値はいくつだった、と聞くと、成績表を開いてはじめてその欄に目が行く。点数は覚えているのに、その点数が偏差値のいくつに変わったのかは見ていない、ということが起こります。

逆のこともあります。「偏差値55でした」とだけ言える生徒に、何点だったのかを聞くと答えられない。点数と偏差値は別々のものとして頭に入っていて、その2つがどうつながっているのかが抜けているのです。

偏差値は、点数を捨てた数字ではありません。点数を出発点にして、平均点からの距離に置き換えたものです。この置き換えの仕組みがわかると、点数と偏差値の両方が読めるようになります。

この記事では、何点取れば偏差値がいくつになるのか、同じ点数でも偏差値が変わるのはなぜか、そして成績表に並ぶ点数・偏差値・順位をどの順に読むのかを扱います。私の専門は高校受験の指導で、教室長として18年、成績表を挟んで生徒と話してきました。判定の読み方そのものは別の記事に譲り、ここでは点数と偏差値の関係に絞ります。

この記事のサマリー

  • 偏差値は平均点との距離:得点そのものではなく、その回の平均点からどれだけ離れているかを表した数字です
  • 平均点ちょうどが偏差値50:対応の起点はここで、平均を上回れば50より上、下回れば50より下に出ます
  • 偏差値60は上位およそ16パーセント:偏差値70はおよそ2パーセントで、数字が示しているのは全体の中での位置です
  • 同じ点数でも偏差値は動く:平均点が上がれば距離は縮まるので、点数が同じでも偏差値は下がります
  • 得点の散らばりでも動く:散らばりが狭い回ほど、同じ1点で偏差値が大きく動きます
  • 志望校まであと何点か:偏差値の差は、その回の散らばりを使えば点数に戻して読めます

模試の偏差値は点数を平均点との距離に置き換えた数字

模試の偏差値は、その回の得点が平均点からどれだけ離れているかを表した数字です。平均点ちょうどなら50、平均点を上回れば50より大きく、下回れば小さくなります。まずこの向きを押さえてください。

数字が作られる順序は3段階です。はじめに自分の得点と平均点の差を出し、次にその差を、受験者全体の得点の散らばり具合で割り、最後に10倍して50を足す。これで偏差値になります。式そのものを覚える必要はありませんが、途中に何が入っているかは知っておいてください。入っているのは自分の得点と、平均点と、散らばり具合の3つだけです。

ここから、偏差値の性質が2つ出てきます。1つは、偏差値は自分の答案だけでは決まらないということ。平均点も散らばりも、その回を受けた人たち全員の答案から計算されます。自分がまったく同じ答案を出しても、周りの出来が違えば数字は変わります。

もう1つは、偏差値と点数は切り離された数字ではないということです。出発点は自分の得点で、そこから引かれるのが平均点、割られるのが散らばりです。だから「何点取れば偏差値がいくつになるか」という問いには答えがあります。ただし答えは1つに決まらず、その回の平均点と散らばりによって変わります。この記事の後半で、その変わり方を扱います。

そもそも学校のテストでは点数と校内順位が返るのに、模試ではなぜ偏差値という別の数字に置き換えて返すのか。その背景には、比べる相手が校内から入試を受ける層へ広がるという事情があります。この点は模試とは何かを扱った記事で扱いました。ここから先は、置き換えの中身そのものに入っていきます。

この記事が扱う「偏差値と点数の見方」

ここで扱うのは、点数が偏差値にどう置き換わるか、その対応がなぜ模試ごとに変わるか、そして成績表の数字をどの順に読むかです。点数が取れないときの原因分析や勉強法そのものは扱いません。また、この記事に出てくる数値は一般的な目安で、実際の平均点と散らばりは模試ごと実施回ごとに違います。自分の数字は成績表でご確認ください。


模試の点数は偏差値にどう換算されるのか──平均点が起点になる

点数と偏差値の対応を読むときの起点は平均点です。平均点ちょうどの答案は偏差値50になり、そこから離れるにつれて数字が動きます。離れ方の大きさを決めているのが、受験者の得点の散らばり具合です。

偏差値の帯──平均点との関係と全体の中での位置
偏差値平均点との関係全体の中でのおおよその位置その数字が意味すること
70以上平均点を大きく上回る上位およそ2パーセントその模試の母集団の中で最上位層にいる
60〜70平均点を上回る上位およそ16パーセントから2パーセントおおむね6人に1人より上の位置にいる
50〜60平均点をやや上回る上位およそ50パーセントから16パーセント平均より上だが、上位層とは差がある
40〜50平均点をやや下回る下位およそ50パーセントから16パーセント平均に届いていないが、届く範囲に入っている
40未満平均点を大きく下回る下位およそ16パーセント単元単位で戻る判断が必要な位置

平均点ちょうどの答案が偏差値50になる

偏差値50は、その回の平均点を取った人に必ず割り当てられる数字です。だから偏差値50は「真ん中の実力」ではなく「その模試を受けた人たちの真ん中」を指しています。誰が受けたかが変われば、同じ答案でも50より上に出たり下に出たりします。

この起点を押さえておくと、成績表の読み方が変わります。偏差値が52だったとき、それは平均点を少し上回ったという意味です。48なら少し下回った。数字そのものを良し悪しで見る前に、平均点との上下を確認してください。平均点は成績表に必ず載っているので、偏差値と平均点はセットで読む数字です。

中学生の模試では、満点の5割から6割あたりに平均点が来るように問題が作られていることが多くあります。ただしこれは全部の模試に当てはまる決まりではありません。難関校を志望する層に向けて作られた模試では、平均点をもっと低く設定して上位層で差がつくようにしてあります。平均点が何点になるように作られているかは、模試の設計そのものです。

なぜ真ん中あたりに平均点を置くのかというと、そのほうが受験者の位置が分かれるからです。平均点が9割の回では、ほとんどの人が高得点に固まってしまい、上位と中位の差が出ません。平均点が1割の回では、逆に大半が低得点に固まります。どちらの場合も、点数の違いが位置の違いとして表れにくくなります。真ん中に平均点を置くのは、点数の差を位置の差に変換しやすくするためです。

ここから、受ける模試を選ぶときの目安が1つ出てきます。自分の得点がその模試の平均点から極端に離れる場合、その模試は自分の位置を細かく測るのに向いていません。平均点を大きく上回り続けているなら、もう少し難度の高い模試のほうが差が見えます。逆に大きく下回り続けているなら、いまの模試では位置が下に張りついたままになります。

偏差値60は上位およそ16パーセント、偏差値70はおよそ2パーセント

偏差値がいくつなら全体のどのあたりなのか、という対応にはおおよその目安があります。偏差値60は上位およそ16パーセント、偏差値70は上位およそ2パーセントです。逆に偏差値40は下位およそ16パーセント、偏差値30は下位およそ2パーセントにあたります。

偏差値の帯と、全体の中での位置

40未満 40〜50 50〜60 60〜70 70以上
下位16% 平均の下 平均の上 上位16% 上位2%

帯の幅は同じでも、含まれる人数は同じではありません。50を挟んだ真ん中の2つの帯に、全体のおよそ7割近くが入ります。両端の帯は人数が少ないぶん、1つ動かすのに必要な点数が大きくなります。

この対応が成り立つのは、模試の得点が平均点のあたりに集まり、そこから離れるほど人数が減るという形になるからです。だから偏差値を5上げるのに必要な労力は、どの帯にいるかで変わります。50から55へ動かすのと、65から70へ動かすのとでは、追い抜かなければならない人数がまるで違います。

ここで気をつけたいのは、この上位何パーセントという数字が示しているのはその模試を受けた人たちの中での位置だということです。同学年の全員の中での位置ではありません。受験者が中学生全体に近い模試と、難関校志望者に絞られた模試とでは、同じ偏差値60でも指している学力層が変わります。

藤原 誠一

元教室長の視点

藤原 誠一|日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー

偏差値を5上げたい、と言う生徒には、いま自分がどの帯にいるかを先に確認してもらっていました。50台前半にいる生徒と60台後半にいる生徒では、同じ「5」でも中身がまったく違うからです。前者は取りこぼしを拾えば届くことが多いのに対し、後者は取りこぼしがほとんどない状態からさらに削る話になります。同じ目標を口にしていても、必要な作業は別物でした。


模試で同じ点数でも偏差値が変わる理由──平均点と得点の散らばり

同じ60点でも、返ってくる偏差値は回によって変わります。動かしているのは2つの数字です。1つはその回の平均点、もう1つは受験者の得点がどれくらい散らばっているかです。この2つを知らないまま偏差値だけを並べると、上がった下がったの話になってしまいます。

平均点が動くと、同じ点数の偏差値が動く

偏差値は自分の得点と平均点の差から作られます。だから自分の点数が変わらなくても、平均点が上がれば差は縮まり、偏差値は下がります。逆に平均点が下がれば差は開き、偏差値は上がります。

たとえば100点満点で60点を取ったとします。平均点が40点だった回なら、差は20点分あります。ところが次の回で同じ60点を取っても、問題が易しくて平均点が55点だったなら、差は5点分しかありません。点数は同じでも、平均点との距離が4分の1になっているので、偏差値は大きく下がります。

この現象は、成績表を点数だけで比べていると読めません。前回より点数が上がったのに偏差値が下がった、という回に出会ったときは、まず成績表の平均点の欄を見てください。平均点が自分の伸びより大きく上がっていれば、その説明がつきます。

平均点が動く理由はもう一つあります。受けている人が入れ替わる場合です。同じ模試でも、時期が進むと受験者が増え、層も変わります。別の模試に申し込めば、比べる相手ごと入れ替わります。数字を推移として読みたいなら、同じ模試を続けて受ける必要があります。模試ごとに数字が食い違ったときの読み方は、塾の模試と外部模試の違いを扱った記事で整理しています。

どの模試を続けて受けるかを決めていない段階では、偏差値の推移という読み方そのものが成り立ちません。受けるたびに違う模試を選んでいると、平均点も散らばりも毎回別の数字になり、比べる土台がなくなります。続けて受ける1本を先に決めておくと、そのあとの数字がつながります。何を基準にその1本を決めるかは、目的別に模試を選び分ける記事で整理しています。

得点の散らばりが狭い回ほど、同じ1点で偏差値が大きく動く

もう1つ動かしているのが、受験者の得点の散らばり具合です。平均点との差を、この散らばりで割ったものが偏差値の元になります。だから散らばりが狭い回ほど、同じ1点が偏差値に与える影響は大きくなります。

散らばりが広い回とは、高得点の人も低得点の人も幅広くいる回です。この回では、平均点より10点上でも、そこに大勢がいるので位置はあまり動きません。反対に散らばりが狭い回とは、みんなの点数が平均点のあたりに固まっている回です。この回で平均点より10点上を取ると、その10点の中に多くの人が詰まっているので、一気に上位へ抜けます。

実感として現れやすいのは、教科ごとの差です。同じ点数でも、教科によって偏差値が違うことがあります。差がつきにくい教科は散らばりが狭くなりやすく、平均点をわずかに上回るだけで偏差値が伸びます。逆に差がつきやすい教科では、同じだけ上回っても偏差値の伸びは小さくなります。5教科の偏差値を横に並べたとき、点数の順番と偏差値の順番が一致しないのはこのためです。

この散らばりは、次の節で扱う「志望校まであと何点か」の計算にそのまま効いてきます。偏差値の差を点数に戻すときの換算率が、この散らばりだからです。

その回の平均点は成績表のどこで確認できるか

平均点は、成績表の中で自分の得点のすぐ近くに載っています。多くの模試では、教科ごとに「自分の得点」「平均点」「偏差値」が横に並ぶ形になっています。この3つを1行として読む習慣をつけてください。偏差値だけを追うと、その数字がどこから出てきたのかが見えなくなります。

成績表が手元にない段階で平均点を知りたい場合は、模試の主催者が公開している成績統計の資料を見ます。実施回ごとの平均点や、得点と偏差値の対応表を出している主催者もあります。ただし平均点は実施回ごとに変わる数字なので、去年の値をそのまま今年に当てはめることはできません。

散らばり具合そのものは、成績表に数値として載っていないことがあります。その場合は、得点分布のグラフを見てください。棒が細く高く立っていれば散らばりは狭く、なだらかに広がっていれば散らばりは広い回です。グラフの形が、その回の1点の効き方を示しています。


模試の成績表で点数・偏差値・順位をどう並べて読むか

成績表には点数、平均点、偏差値、順位、そして志望校ごとの判定が並んでいます。読む順序は、点数と平均点の差を先に見て、それが偏差値のいくつになったかを確認し、最後に志望校との距離を測る、という流れです。順位はこの間に、位置を確かめる補助として使います。ここでは順位の読み方と、志望校との距離の測り方を扱います。点数が思うように取れない原因や、その対策そのものは別の主題になるため、ここでは踏み込みません。

全国模試の1位が何人も出るのはなぜか──順位は同点で並ぶ

順位は、同じ点数の人が同じ順位に並びます。だから1位が1人とは限りません。満点が出やすい教科や回では、同じ点数の受験者が何人も1位に並ぶことが起こります。教科単位の順位を見て「1位だった」と言えるのは、多くの場合そういう状況です。

順位のもう一つの性質は、母集団の人数で意味が変わることです。1,000人の中の50位と、10,000人の中の50位では、上位の割合がまるで違います。前者は上位5パーセント、後者は上位0.5パーセントです。順位の数字だけを前回と比べても、受験者数が変わっていれば比較になりません。

だから順位を見るときは、何人中の何位なのかを必ず一緒に確認してください。受験者数が書かれていない順位は、単独では読めない数字です。この点で、母集団の人数に左右されずに位置を示せる偏差値のほうが、推移を追うには扱いやすくなります。順位は、偏差値で見た位置を人数で裏づける数字として使います。

順位が偏差値より役に立つ場面もあります。志望校の募集人数と並べて見るときです。県内の受験生が広く受けている模試であれば、志望校を第1志望にしている人の中での順位が出ることがあります。その順位が募集人数の範囲に入っているかどうかは、偏差値の数字よりも直接的な情報です。ただし模試を受けていない受験生も本番には参加するため、そのまま本番の順位になるわけではありません。

志望校の偏差値まであと何点か──偏差値5の差は何点分か

志望校の偏差値の目安と自分の偏差値を並べると、差がわかります。その差は、その回の得点の散らばりを使えば点数に戻せます。偏差値10の差が、散らばり1つ分にあたるからです。

具体的にはこうなります。散らばりが15点の回であれば、偏差値10の差は15点分、偏差値5の差は7.5点分です。散らばりが10点の回なら、偏差値10の差は10点分、偏差値5の差は5点分になります。同じ「偏差値があと5足りない」でも、必要な点数は回によって変わるということです。

この計算をしておくと、次に何をするかが決めやすくなります。あと7点なら、正答率の高い問題での取りこぼしを拾えば届く範囲です。あと20点なら、単元単位で戻る判断になります。偏差値のままでは「足りない」としか言えませんが、点数に戻すと作業の大きさが見えます。

ここで1つ注意があります。高校の偏差値として示されている数字と、模試の成績表に出る偏差値は、同じ物差しの上にあるとは限りません。高校の偏差値は、どの模試のデータをもとに作られたかで変わります。県内の模試が出した目安と、全国規模の模試が出した目安では、同じ高校でも数字が違うことがあります。志望校の偏差値を見るときは、それがどの模試の基準かを確認してください。神奈川の公立上位校について、偏差値と選抜比率を並べて比べたものは志望校別に偏差値と選抜比率を比較した記事にまとめています。

なお、偏差値から先に進んで志望校ごとの合格可能性がどう出されるかは、判定という別の数字の話になります。判定の作られ方と読み方は、模試の判定の見方を扱った記事で整理しています。

藤原 誠一

元教室長の視点

藤原 誠一|日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー

「偏差値があと3足りない」と言われたとき、私は必ず「それは何点分ですか」と聞き返していました。答えられる生徒はほとんどいません。そこで一緒に計算してみると、5点足りないだけだった、ということがよくありました。5点なら、直前の回で落とした正答率の高い問題を数えれば足ります。数字を点数に戻すだけで、手が届く話に変わる場面を何度も見てきました。

数字を点数に戻すときの前提

偏差値の差を点数に戻す計算は、その回の得点の散らばりを使います。散らばりは実施回ごとに変わるため、出てくる点数もそのつど変わります。また、志望校の偏差値の目安はどの模試のデータをもとにしたかで違うため、自分が受けた模試の基準と揃っているかを確認してから差を測ってください。


模試の偏差値が制度上の基準値として使われる──臨海セミナーの模試体系

書籍『受験・学校選び ── 元教室長が教える後悔しない塾の決め方』の表紙

著書のご案内

受験・学校選び ── 元教室長が教える後悔しない塾の決め方

藤原 誠一 著/日本進学教育研究機構

成績表の数字を塾がどう扱っているかは、面談で確認できる項目です。「偏差値の何を見ていますか」と尋ねると、点数まで戻して話す塾かどうかがわかります。書籍では、面談で確認しておきたい項目を章立てて扱いました。

ここまで、偏差値は平均点との距離を表した数字だと書いてきました。その数字が、実際の制度の中で基準値として使われている例があります。神奈川県内で高校受験を扱う臨海セミナーが実施する神奈川統一模試では、特待生判定の基準が偏差値の値で設定されています。

公式の案内によると、区分は偏差値64以上と偏差値67以上の2段階で、この値を境に授業料の扱いが変わる仕組みです。抽象的な指標としてではなく、64・67という具体的な数字がそのまま線として引かれています。

この判定には条件が付いています。対象になるのは教室受験で、自宅受験は特待生判定の対象外と明記されています。同じ模試でも受験方法によって扱いが変わるということです。対象となる日程も限られており、中3は10月・11月・12月の教室受験、中2は12月の教室受験が対象と案内されています。

神奈川統一模試そのものは、「臨海セミナーにお通いでない方が対象の模試です」と公式に明記されており、塾外生を対象として設計されています。神奈川県の公立入試が当日点と学校成績で判定されることに合わせ、高校ごとに設定された内申点と学力検査の比率にもとづいて志望校判定を行う設計です。

偏差値という数字は、ここまで見てきたとおり、その回の平均点と散らばりから計算される相対的な値です。それが制度上の線として使われているということは、どの模試の偏差値なのかが特定されていて初めて成り立つということでもあります。64という数字は、この模試の受験者の中での位置を指しています。

この見方は、志望校の偏差値を読むときにも同じように使えます。偏差値の数字が出てきたら、まず「どの模試の偏差値か」を確認する。制度の線として引かれている64も、志望校の目安として書かれている数字も、どちらもある特定の母集団の中での位置を指しています。母集団が特定されていない偏差値は、他の数字と比べる土台を持ちません。

なお、日程・費用・対象学年・判定の条件は年度によって変わります。受験を検討される場合は、必ず各社の公式サイトで最新の情報をご確認ください。

返ってくる数字は偏差値だけではない──湘南ゼミナール・ステップ

成績表に何を載せるかは、模試を作る側の設計です。神奈川県内で高校受験を扱う代表的な2社について、公式サイトで確認できる範囲を並べておきます。

湘南ゼミナールの特色検査対策模試では、学年によって返す内容が切り替わる設計が公式に案内されています。低学年のうちは、点数や位置よりも「実際の特色検査でどの大問を解く力があるのか」「どの高校と相性が良いのか」という、問題との相性を示す情報が中心です。中3の夏以降になると、志望校判定に加えて他の高校の合格S値という目安が出ます。S値は偏差値とは別に定義された独自の指標です。直近の案内では無料受験で個別カウンセリングが付く形でした。

ステップのオープン模試は、中3を対象に神奈川県の公立入試5科目に対応しています。2026年9月時点の公式の案内では、志望校の合否判定、入試までの成績の推移、各科目ごとの達成度と弱点がわかると説明されています。特色検査対策模試と同時に実施する回では、6科目の総合成績で合否判定を確認できるとされています。一般生の受験料が塾生とは別に設定されており、塾生以外の受験も受け付けています。

並べてみると、返ってくる数字の種類が3社で違います。偏差値と順位を軸にするもの、合格S値という独自の目安を出すもの、科目ごとの達成度を前面に出すもの。同じ「模試の結果」でも、何を数字にしているかは同じではありません。数字を読むときは、その模試が何を測って何を返す設計なのかを先に確認してください。


よくある質問(FAQ)

Q模試の偏差値は何を表している数字ですか?

模試の偏差値は、その回の得点が平均点からどれだけ離れているかを表した数字です。平均点ちょうどなら50、平均点より上なら50より大きく、下なら小さくなります。何点で偏差値がいくつになるかは、その回の平均点と、受験者の得点がどれくらい散らばっているかで決まります。得点そのものを評価した数字ではありません。

Q模試の偏差値60は何点くらいで取れますか?

何点で偏差値60になるかは、その回の平均点と得点の散らばりで変わります。平均点が低く難しかった回なら平均点より少し上でも60に届き、平均点が高く易しかった回なら大きく上回らないと届きません。偏差値60は全体のおよそ上位16パーセント、6人に1人の位置です。点数の目安は成績表で確認してください。

Q模試の平均点はどのくらいに設定されていますか?

模試の平均点は、実施回や学年、教科によって変わります。多くの模試は満点の5割から6割あたりに平均点が来るように問題を作りますが、難関校向けに作られた模試では平均点がもっと低く設定されます。自分が受けた回の平均点は成績表に載っているので、偏差値を読むときは必ずその数字と一緒に見てください。

Q模試で何点取ればいいという目安はありますか?

まず平均点を基準にしてください。平均点を超えていれば偏差値は50より上に出ます。そのうえで志望校に届いているかを見るには、志望校の偏差値の目安と自分の偏差値の差を確認します。何点足りないかは、偏差値の差にその回の散らばりを掛けると出せます。何割という一律の目安は、模試ごとに難易度が違うため成り立ちません。

Q模試の点数が上がったのに偏差値が下がることはありますか?

あります。偏差値は平均点との距離で決まるため、自分の点数が上がっても平均点がそれ以上に上がれば、距離は縮まって偏差値は下がります。問題が易しかった回や、受験者の準備が進んだ時期の回に起こりやすい現象です。点数と偏差値が逆に動いたときは、まず成績表の平均点が前回からどう変わったかを確認してください。

Q全国模試の1位はどのくらいの点数で決まりますか?

順位は同じ点数の人が並ぶため、1位が1人とは限りません。満点が出やすい教科や回では、同じ点数の受験者が何人も1位に並びます。順位は母集団の人数によっても意味が変わり、受験者が多い模試ほど同じ順位でも上位の割合は小さくなります。順位を見るときは、何人中の何位なのかを必ず一緒に確認してください。


まとめ

模試の偏差値は、その回の得点が平均点からどれだけ離れているかを表した数字です。平均点ちょうどなら50、上回れば50より上、下回れば下。計算に入っているのは自分の得点と平均点、そして受験者の得点の散らばり具合の3つだけです。点数を捨てた数字ではなく、点数を出発点にして距離に置き換えたものです。

偏差値がいくつなら全体のどのあたりかには、おおよその目安があります。偏差値60は上位およそ16パーセント、70は上位およそ2パーセントです。ただし帯の幅は同じでも入っている人数は違い、50を挟んだ真ん中の2つの帯に全体の7割近くが集まります。同じ「あと5」でも、どの帯にいるかで必要な作業は変わります。

同じ点数でも偏差値が動くのは、平均点と散らばりが回ごとに変わるからです。点数が上がったのに偏差値が下がったときは、平均点が自分の伸びより大きく上がっています。成績表では、自分の得点と平均点と偏差値を1行として読んでください。この3つを切り離すと、数字の動きが説明できなくなります。

順位は同じ点数の人が並ぶため、1位が1人とは限りません。母集団の人数が変われば同じ順位でも上位の割合が変わるので、何人中の何位なのかを一緒に確認します。推移を追うには、人数に左右されない偏差値のほうが扱いやすい数字です。

志望校まであと何点かを知りたいときは、偏差値の差にその回の散らばりを掛けます。散らばりが15点の回なら偏差値5の差は7.5点分、10点の回なら5点分です。偏差値のままでは「足りない」としか言えませんが、点数に戻すと次にやることの大きさが見えます。数字を眺めて終わらせず、点数に戻すところまでを成績表を見る手順に入れてください。

この記事を書いた人

藤原 誠一

藤原 誠一

日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー/元塾教室長

神奈川県の大手学習塾で18年、教室長として進路指導を統括。模試の結果を「現在地」として読み、次の一手に変えるための考え方を発信しています。

書籍『受験・学校選び ── 元教室長が教える後悔しない塾の決め方』の表紙

著書

受験・学校選び ── 元教室長が教える後悔しない塾の決め方

Amazonで見る →

執筆者プロフィール|note(藤原 誠一)