「結局どの模試を受けたらいいんでしょうか」。保護者面談で最も多く受けた質問の一つがこれでした。調べれば模試の名前はいくらでも出てくるけれど、どれが自分の子に合うのかがわからない、と続きます。
実際に検索してみると、そうなる理由がわかります。「模試 おすすめ」で調べても並ぶのは大学受験の話ばかりで、中学生向けの記事にたどり着いても、今度は模試の名前が10種類以上並びます。選択肢が多いことと、選べることは別です。名前を並べられても、比べる基準がなければ決められません。
この記事では、中学生の模試を「何のために受けるのか」という目的で3つに分けて整理します。私の専門は高校受験の指導で、教室長として18年、生徒の成績表を見ながら次に受ける模試を決める場面に立ち会ってきました。どの模試が優れているかという順位づけはしません。扱うのは、目的ごとにどういう性格の模試が対応するのか、目的が2つ重なったときにどちらを主軸に置くのか、そして目的の数で受ける回数と費用がどう決まるのかです。
この記事のサマリー
- おすすめは目的で変わる:中学生の模試に「これを受けておけば間違いない」という一つの答えはありません。目的が決まれば候補は3つに絞れます
- 基礎確認・全国での立ち位置:同学年全体の中での位置と単元別の定着を見る目的。全国規模で学年別に実施され、受験料が無料のものもあります
- 志望校判定:志望する高校に届いているかを測る目的。県ごとに違う入試の仕組みを反映して作られた模試でなければ、この判定は出せません
- 難関校・トップ校対策:上位層の中での位置を測る目的。母集団を絞って出題の難度を上げた模試で、偏差値は低めに出ます
- 目的が重なるとき:毎回受ける模試を1つに固定し、それ以外は年1回にとどめます。3つを並行させると日程が埋まり、解き直しが追いつきません
- 回数と費用:目的の数がそのまま回数になり、回数が費用と解き直しの時間になります。目的を絞ることが、受けすぎを防ぐ一番の方法です
目次
模試のおすすめは目的で変わる──中学生が最初に決めるのは模試名ではなく目的
中学生の模試に、誰にとっても最善という一つの答えはありません。おすすめが変わるのは、模試ごとに測っているものが違うからです。同じ中3が同じ日に別の模試を2つ受ければ、返ってくる偏差値は違う数字になります。どちらかが間違っているのではなく、比べている相手が違うだけです。
この構造を知らずに模試を選ぶと、返ってきた数字を読めません。全国規模の模試で偏差値60が出ても、志望する公立高校に届いているかどうかはそこからは出てきません。逆に、難関校向けの模試で偏差値45が出たとしても、同学年全体の中で下位にいるという意味にはなりません。数字が読めない原因は、模試の選び方ではなく、何を測るつもりだったかが決まっていなかったことにあります。
ですから、順序が逆になっているご家庭が多いのです。模試の名前を先に集めて、その中から選ぼうとする。けれども名前の一覧を眺めても、比較の軸がないので選べません。先に決めるのは何のために受けるのかのほうです。目的が決まれば、対応する模試の性格が決まり、候補は自然に絞られます。
目的は、大きく3つに分かれます。同学年全体の中で自分がどのあたりにいるかを知りたい、志望する高校に届いているかを知りたい、上位層の中での位置を知りたい。この3つです。次の章で、それぞれにどういう性格の模試が対応するのかを整理します。
なお、目的は途中で変わります。中1で基礎確認から入り、中3で志望校判定に移るのが標準的な流れです。ここで扱うのは、ある時点で何を測りたいかという話であり、3年間ずっと同じ模試を受け続けるべきだという話ではありません。
この記事が扱う「模試のおすすめ」
ここで扱うのは、中学生が高校受験に向けて受ける模試を、目的別にどう選び分けるかです。特定の模試を順位づけしたり、どれが優れているかを評価したりはしません。また、模試ごとの実施日程・受験料・申し込み方法は年度によって変わるため、具体的な数値は各模試の公式サイトでご確認ください。この記事が示すのは、比べるときの軸のほうです。
目的別に分けると中学生の模試は3つになる
中学生が受ける模試を目的で分けると、3つの型になります。それぞれ測っているものが違い、対応する模試の作られ方も違います。まず全体像を整理します。
| 目的 | 何を測るか | 対応する模試の性格 | 主に受ける学年 |
|---|---|---|---|
| 基礎確認・全国での立ち位置 | 同学年全体の中での位置と単元別の定着 | 全国規模で学年別に実施。無料のものがある | 中1・中2が中心 |
| 志望校判定 | 特定の高校に届いているか | その都道府県の入試の出題形式と選抜方法に合わせて作られる | 中3が中心 |
| 難関校・トップ校対策 | 上位層の中での位置 | 母集団を上位層に絞り、出題の難度を上げている | 中2の後半から中3 |
表の左から2列目が、3つを分けている本体です。順番に見ていきます。
基礎確認と全国での立ち位置──無料の全国規模テストが入口になる
最初の目的は、同学年全体の中で自分がどのあたりにいるかを知ることです。この目的に対応するのは、全国規模で実施される模試です。地域を問わず同じ問題で行われるため母集団が大きく、単元別の正答率から定着していない範囲も見えます。
この目的で最初に検討するのは、東進が実施する全国統一中学生テストです。中1から中3までを対象とし、受験料は無料招待という形をとっています。学習の進度に応じて全学年統一部門・中2生部門・中1生部門から選ぶことができ、基礎・標準・難関の3レベルで学力を測る設計です。成績も試験実施後の短期間で返却されます。無料であることは、この目的にとって実質的な意味があります。基礎確認は年1回で足りることが多く、そこに費用をかけずに済めば、判定を取る目的の模試に予算を回せるからです。
代替の候補としては、通信教育の会員向けに実施される判定模試があります。自宅で受けられ、追加料金がかからない形のものです。選び分けの基準は、会場で受けたいかどうかと、受験機会の頻度です。会場受験のほうが本番の形式に近い緊張感を体験できますが、日程が限られます。自宅で受けられるものは日程の自由度が高い代わりに、時間管理を自分で徹底する必要があります。
受験形式そのものの違いと、無料で受けられる模試の見分け方については、模試の種類を会場・自宅・オンラインで整理した記事で扱っています。「無料」と書かれていても、誰でも無料なのか、受講者にとって追加料金がないだけなのかで意味が変わるため、申し込む前に確認しておくと選びやすくなります。
志望校判定──住んでいる地域の入試に合わせた模試が判定の精度を持つ
2つ目の目的は、志望する高校に届いているかを測ることです。この目的に対応するのは、志望校がある都道府県の入試に合わせて作られた模試です。全国規模の模試では、この目的は果たせません。
理由は、公立高校入試の仕組みが都道府県ごとに違うからです。内申点と学力検査の比率、独自問題の有無、面接や特色検査といった項目の扱いは県ごとに設計されています。合格可能性の判定は、この仕組みに数字を当てはめて計算されるものです。全国一律の基準で出された判定は、志望校の選抜の構造を反映していません。同じ偏差値でも、県が変われば届く高校は変わります。
この目的で最初に検討するのは、志望校がある地域で受験者数が多い公開模試です。首都圏ではVもぎやWもぎ、関西圏では五ツ木のテスト会、埼玉県では北辰テスト、愛知県では愛知全県模試といったように、地域ごとに広く受験されている模試があります。受験者数が多いほど母集団が実際の受験層に近づき、判定の精度が上がります。
代替の候補は、同じ地域で実施されている別の公開模試です。選び分けの基準は2つあります。志望校の判定が出るかどうかと、受験者の層が自分の志望校帯と重なっているかどうかです。公式サイトには判定対象校の一覧が掲載されているので、申し込みの前に志望校が入っているかを確認します。もう一つ、自分の得点が母集団の真ん中あたりに来る難度のものを選びます。難度は上げるものではなく、合わせるものです。
地域の模試をどう選び、結果を志望校の決定にどうつなげるかを神奈川県を例に手順として整理したものが、神奈川で受けるべき模試を扱った記事にあります。県内特化の模試を主軸に置き、全国模試を節目に入れるという組み立て方は、他の都道府県でも考え方として使えます。
難関校・トップ校対策──母集団を上位層に絞った模試で位置を測る
3つ目の目的は、上位層の中での位置を測ることです。国立や私立の難関高校、あるいは公立のトップ校を目指す場合、一般的な模試では上位に集まりすぎて差が出ません。偏差値が70台で止まってしまうと、その中のどこにいるのかが読めなくなります。
この目的で最初に検討するのは、駿台中学生テストです。全国実施の公開テストで、国公私立の難関高校合格を目指す層が受験しています。中1から中3までを対象とし、中1・中2向けと中3向けで実施が分かれています。会場受験と自宅受験の両方が用意されています。
この型の模試を受けるときに知っておくべきことがあります。母集団のレベルが高いため、偏差値は他の模試より低く出ます。一般的な模試で65だった生徒が、この型の模試では50台になることは珍しくありません。これは学力が下がったのではなく、比べる相手が変わっただけです。数字の絶対値ではなく、上位層の中でのどのあたりにいるかを読む模試だと理解して受ける必要があります。
代替の候補は、志望する難関校の入試形式に近い出題をする模試です。選び分けの基準は、志望校がその模試の判定対象に入っているかどうかと、出題形式が記述中心か選択中心かです。難関校の入試は記述の比重が高いことが多く、選択形式の模試では測れない部分があります。
なお、この目的の模試を主軸にするのは、志望校が難関校に固まってからで構いません。まだ決まっていない段階で受けると、低く出た偏差値だけが残り、判断材料になりません。
模試の目的が2つ重なるときはどちらを主軸に置くか
ここまで3つの目的を分けて書いてきましたが、実際には目的が1つに収まらないことのほうが多くなります。志望校の判定も取りたいし、全国での位置も確かめておきたい。難関校も選択肢に入れているが、公立高校も受ける。こうした状態のときにどうするかを整理します。
結論から書くと、主軸を1つ決めて、残りは年1回で足します。3つを並行させると、どれも判断材料になりません。理由は次の項で書きます。
主軸を1つ決めて、残りは年1回で足す
主軸とは、実施回のたびに受け続ける模試のことです。1つに固定するのは、返ってきた数字を線としてつなげるためです。ある回で出た偏差値は、その日にその模試を受けた層の中での順位を言い換えたものにすぎません。申し込む先を変えれば、比べる相手ごと入れ替わります。都度ちがう模試を受けていると、成績表は増えても、上がったのか下がったのかを言える材料にはなりません。
どれを主軸にするかは、その時点で最も判断に使う数字はどれか、で決まります。志望校が固まっていて、そこに届いているかを知る必要があるなら、地域の入試対応模試が主軸です。まだ志望校が決まっていない段階なら、全国規模の模試が主軸になります。難関校を第一志望に固めているなら、上位層向けの模試を主軸に置き、公立高校の判定は地域の模試を年に数回加えて取ります。
主軸以外を年1回にとどめるのは、時間と費用の制約からです。模試は1回で半日前後が拘束され、返却後の解き直しにも時間がかかります。主軸を毎回受けたうえで別の模試も同じ頻度で受けると、日曜日が模試で埋まり、解き直しの時間が残りません。年1回であれば、母集団を変えて位置を確かめるという目的は十分に果たせます。
年1回をどこに置くかは、学期の区切りが目安になります。主軸の実施日と近づけすぎると、2週続けて模試という形になり、どちらの解き直しも中途半端になります。
主軸を入れ替えるのはどんなときか
主軸は固定するものですが、一度も変えないという意味ではありません。入れ替えるべき場面が2つあります。
1つ目は、志望校が決まったときです。それまで全国規模の模試で位置を追ってきたとしても、志望校が決まった時点で必要な数字は「その高校に届いているか」に変わります。全国一律の基準で出た偏差値では、この問いに答えられません。地域の入試対応模試へ主軸を移します。目的が変わったのだから、測る道具も変わるということです。
2つ目は、学年が上がって受験できる回が変わったときです。地域の入試対応模試は受験生が集まる中3を中心に実施されるため、中1・中2を対象にした回が限られます。中1・中2で全国規模の模試を主軸にせざるを得ないのは、その学年に開かれている回がそちら側に多いからです。中3になって選択肢が広がった時点で、主軸を移すことになります。
この入れ替わりは学年の進行とほぼ連動しており、中1・中2は基礎確認、中3は志望校判定という形に落ち着くのが標準的です。学年ごとに受ける時期と回数がどう変わるかは、中学生の模試を学年別に整理した記事で扱っています。目的の切り替わりを時間軸で見たものと考えてください。
逆に、入れ替えないほうがよい場面もあります。数字が思ったより低く出たので別の模試に変える、という動機での変更です。母集団が変われば数字は変わるので、易しい層の模試に移れば偏差値は上がります。ただしその数字は志望校に届いているかを示していません。数字を良くするための入れ替えは、判断材料を捨てる行為になります。
模試を受ける回数と費用は、目的をいくつ持つかで決まる
模試を何回受けるべきか、いくらかかるのかは、単独では決まりません。持っている目的の数と、主軸をどこに置いたかで決まります。目的を絞る作業が、そのまま回数と費用を決める作業になっているということです。
模試受けすぎはなぜ起きるか──目的が増えるほど回数が増える
模試を受けすぎる状態は、意図して起きるものではありません。目的が決まらないまま、案内が来た模試を都度受けていくと、結果として回数が積み上がります。塾から案内が来た回、書店で申込書を見かけた回、無料だからと申し込んだ回。1回ごとには受ける理由があっても、全体としては軸がありません。
回数が増えると、3つの負担が発生します。1つ目は時間です。模試は1回で半日前後が拘束されます。2つ目は解き直しです。返ってきた成績表から単元別の正答率を見て、できなかった範囲に手をつける作業には、1回につき数時間かかります。回数が増えるほど、この時間が積み上がっていきます。3つ目は疲労です。本番形式で数時間集中したあとは、その日の残りと翌日の学習に影響が出ます。
問題は、解き直しが追いつかなくなると、模試を受ける意味そのものが消えることです。模試は受けた時点では何も変わりません。変わるのは、返却後にできなかった範囲へ手をつけたあとです。ここが回らない状態で回数だけを増やすと、時間と費用を使って成績表が増えるだけになります。
受けすぎを防ぐ方法は、回数の上限を決めることではなく、目的を絞ることです。目的が1つなら主軸が1つに決まり、その模試の実施回だけを受ければよくなります。目的が2つなら、主軸の実施回に年1回を足す形になります。目的の数がそのまま回数の設計になるということです。
中3の1年について、回数の目安が情報源によって食い違って見える理由と、時期ごとに模試の役割がどう変わるかは、高校受験の模試を時期別に整理した記事で扱っています。回数は模試の年間日程で決まるという考え方を先に押さえておくと、案内が来るたびに迷うことがなくなります。
受験料は模試によって幅がある──無料・初回無料・毎回有料の3つ
模試の受験料には、大きく3つの形があります。
1つ目は、誰でも無料で受けられるものです。全国規模で実施される模試の中には、受験料を無料としているものがあります。基礎確認の目的で年1回受けるのであれば、この形で足ります。
2つ目は、初回だけ無料で、2回目以降が有料になるものです。塾が塾外生に向けて実施している公開模試に多い形です。1回目で成績表の形式や判定の出方を確かめてから、続けるかどうかを判断できます。
3つ目は、毎回受験料がかかるものです。地域の公開模試や難関校向けの模試はこの形が中心になります。主軸として実施回のたびに受けるのであれば、年間の合計額で考える必要があります。
金額の水準は模試によって幅があり、同じ模試でも学年や受験方法によって変わることがあります。また年度ごとに改定されるため、この記事では具体的な金額を挙げません。判断に必要なのは、主軸に置く模試の年間の実施回数と1回あたりの受験料を掛けた額で、単発の金額ではありません。目的を1つに絞ると、この計算がそのままできる形になります。
費用のご相談を受けたとき、1回あたりの金額を気にされるご家庭は多いのですが、実際に効いてくるのは年間の回数のほうでした。1回3,000円でも年8回受ければ2万円を超えます。しかも本当の負担は金額ではなく、日曜日が8回埋まることと、その8回分の解き直しの時間です。私が面談で確認していたのは金額ではなく、返ってきた成績表を開く時間が家庭の中に確保されているかどうかでした。
回数を決めるときの順序
受ける回数は「年に何回が適切か」から考えると決まりません。順序は、目的を決める、目的に対応する模試を主軸に選ぶ、その模試の年間実施回数を確認する、です。主軸の実施回数がそのまま回数になり、目的が2つあるときだけ年1回を足します。回数を先に決めて模試を後から探すと、目的に合わない模試を回数合わせで受けることになります。
塾外生を対象に設計された模試という形──臨海セミナーの模試体系
ここまで、目的に対応する模試を主軸に選ぶという整理をしてきました。ただし、この選び方には前提があります。その模試を、塾に通っていない状態で申し込めるかどうかです。塾の中だけで実施されるテストは、外から選ぶことができません。この点について、塾外生を対象として設計されている例として、神奈川発の大手である臨海セミナーの模試を見てみます。
臨海セミナーの神奈川統一模試は、公式サイトの実施要項に「臨海セミナーにお通いでない方が対象の模試です」と明記されています。塾生も受けられるという形ではなく、塾外生に対象を絞って設計された模試だということです。この記事で扱ってきた「目的に合う模試を外から選ぶ」という選び方が、そのまま成立する形になっています。
もう一つ特徴的なのは、地域で受け皿が分かれている点です。神奈川県在住の場合は神奈川統一模試、東京・千葉・埼玉・大阪の場合は中学生臨海公開模試という形で、申し込む先が案内で分けられています。前者は神奈川県の公立高校選抜方法の計算式に当てはめた志望校判定を行い、判定を出せる高校は最大3校とされています。志望校判定という目的に対して、地域ごとの受け皿が用意されているということです。
費用の形も、この記事で整理した3つのうちの2つ目に当たります。いずれの模試も初回は無料で、2回目以降に受験料が発生する形です。金額は学年と模試によって異なり、年度ごとに改定されます。1回目で成績表の形式と判定の出方を確認してから、主軸として続けるかどうかを判断できる構成になっています。
実施の形にも幅があります。神奈川統一模試には教室で受ける回と自宅で受ける回があり、対象学年は日程によって変わります。また、特色検査に対応した模試は希望者のみが受ける形で、この枠を申し込まない場合は当日の時間割が短くなります。授業料の割引につながる特待生判定は教室受験のみが対象で、自宅受験は対象外とされています。同じ模試の中に、学力を測る・志望校判定を取る・別形式に備えるという複数の目的が並んでいる構成です。
ただし、模試の日程・会場・対象学年・受験料は年度や地域によって変わります。受験を検討する際は、必ず最新の実施要項を公式サイトで確認してください。また、どの模試を使う場合でも判定は指標の一つであり、1回の結果で志望校を決めるものではありません。

著書のご案内
受験・学校選び ── 元教室長が教える後悔しない塾の決め方
塾に通う前に外部の模試を受けておくことの意味は、書籍でも扱いました。入塾の面談では「塾生でなくても受けられる模試はありますか」と聞いてみると、その塾が外部にどこまで開いているかがわかります。
他塾は塾外生にどこまで開いているか──湘南ゼミナール・ステップ
神奈川県内で高校受験を扱う塾は臨海セミナーだけではありません。外から模試だけを申し込めるかどうかは塾ごとに事情が違うので、代表的な2社について、公式サイトで確認できた範囲を書いておきます。
湘南ゼミナールは、神奈川県の公立高校入試に的を絞った集団指導の塾です。日々の学習サイクルの延長線上に模試を置き、入試までを一続きの流れとして設計しています。模試がカリキュラムの一部として組み込まれているぶん、外部から模試だけを取り出して受けるという使い方は、想定の中心にはありません。
ステップも神奈川県内に限って教室を置く集団指導塾です。こちらは入試情報の提供と面談を厚くすることで、模試で出た数字を進路の判断へ橋渡しする部分を支える設計をとっています。模試そのものは外部にも開かれており、2026年9月時点の模試案内ではオープン模試と特色検査対策模試に一般生の受験料が塾生とは別に設定されています。塾生向けに設計された模試に一般生の枠を用意する形で、申し込みは各スクールへ電話し、受験料は窓口で支払う導線です。
湘南ゼミナールについては、通年で外部の中学生が単独で申し込める公開模試の案内は、模試・イベント情報で確認できる範囲では見当たりませんでした。塾外生の立場で見ると、開き方は3つに分かれます。対象そのものが塾外生に絞られている模試、塾生向けの模試に一般生の枠が用意されている模試、そして塾内で完結している模試です。外から模試だけを選ぶという使い方が前提どおり成立するのは1つ目で、2つ目は塾生と同じ回に一般生として加わる形になります。塾の中で実施されるテストと、外部に開かれた模試の違いについては、塾の模試と外部模試の違いを扱った記事で整理しています。なお各塾の扱いは年度によって変わることがあるため、申し込みの前に直接ご確認ください。
よくある質問(FAQ)
目的を基準に選びます。中学生が受ける模試は、同学年全体の中での位置と単元の定着を見る全国規模のもの、志望する高校に届いているかを判定する地域の入試対応のもの、上位層の中での位置を測る難関校向けのものに分かれ、測っているものが違うためです。模試名から選ぶと、目的に合わない数字が返ってきます。
一つには決まりません。志望する高校のレベルと住んでいる地域で候補が入れ替わるためです。公立高校が第一志望なら、その都道府県の入試の出題形式と選抜方法に合わせて作られた模試が判定の精度を持ちます。全国での位置や基礎の確認が目的なら全国規模の模試、難関校を目指すなら上位層に母集団を絞った模試になります。
目的を決めないまま、案内が来た模試を都度受けていく受け方です。模試は1回で半日前後が拘束され、返却後の解き直しにも数時間かかります。回数が増えるほどこの時間が積み上がり、解き直しが追いつかなくなります。受ける模試が毎回違えば推移としても読めないため、時間だけを使って判断材料が増えない状態になります。
無料のものから数千円のものまで幅があります。誰でも無料で受けられる全国規模のテスト、1回目だけ無料で2回目以降が有料になるもの、毎回受験料がかかるものの3つがあり、同じ模試でも学年や受験方法で金額が変わることがあります。金額は年度ごとに改定されるため、申し込みの前に各模試の公式サイトで確認してください。
中学生の模試は5教科または3教科を通しで受ける形が基本で、科目を選んで申し込む形式は多くありません。ただし特色検査に対応した回のように希望制の枠がある模試では、申し込まなかった場合に空き時間が生じます。この時間は次の科目の確認や暗記にあてるのが一般的ですが、待機場所と退室の扱いは会場ごとに違うため、事前に実施要項で確認してください。
志望校の判定を取ることが目的なら受けたほうがよい場合があります。塾の中だけで実施されるテストは母集団がその塾の生徒に限られ、志望校に届いているかを測る設計になっていないことがあるためです。通っている塾が外部にも開かれた模試を実施している場合は、そのまま使えます。まず自分が受けているテストがどちらなのかを確認してください。
まとめ
中学生の模試のおすすめは一つに決まりません。決まらない理由は選択肢が多いからではなく、模試ごとに測っているものが違うからです。同学年全体の中での位置と単元の定着を見る全国規模の模試、志望する高校に届いているかを測る地域の入試対応模試、上位層の中での位置を知る難関校向けの模試。この3つは難易度の上下ではなく、別のものを測る道具です。
ですから、先に決めるのは模試の名前ではありません。何のために受けるのかという目的のほうです。目的が決まれば対応する模試の性格が決まり、候補は3つのうちの1つに絞られます。その中で最初に検討するものを1つ選び、公式サイトで志望校が判定対象に入っているか、自分の得点が母集団の真ん中あたりに来る難度かを確認します。
目的が2つ以上あるときは、主軸を1つ決めて残りは年1回で足します。3つを並行させると日程が埋まり、解き直しの時間が残りません。主軸を入れ替えるのは、志望校が決まったときと、学年が上がって受験できる回が変わったときです。数字が低く出たから易しい模試へ移る、という入れ替えだけは避けてください。数字は良くなりますが、志望校に届いているかという情報を失います。
回数と費用も、目的の数から決まります。目的が1つなら主軸の実施回だけ、2つなら主軸に年1回を足す形です。受けすぎが起きるのは回数を決めていないからではなく、目的を決めないまま案内が来た模試を都度受けているからです。受験料は、誰でも無料のもの、初回無料で2回目以降が有料のもの、毎回有料のものの3つに分かれます。見るべきは1回あたりの金額ではなく、主軸の年間実施回数を掛けた額です。
塾外生の立場で模試を選ぶ場合は、その模試が外部に開かれているかを先に確認します。臨海セミナーの神奈川統一模試と中学生臨海公開模試は、実施要項に塾外生が対象と明記されており、地域によって申し込む先が分かれています。いずれも初回は無料で、2回目以降に受験料が発生する形です。神奈川統一模試では県の公立高校選抜方法の計算式に当てはめた判定が返り、判定を出せる高校は最大3校とされています。
返ってきた数字をどう読むかは、また別の話になります。偏差値や判定の意味、模試ごとに基準が変わる理由については、順次この場で扱っていきます。
最後に一つだけ。「どの模試がおすすめですか」と聞きたくなったときは、その前に「今回は何を知りたいのか」を一度言葉にしてみてください。ここが言えれば、模試はもう半分決まっています。


元教室長の視点
藤原 誠一|日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー
面談で模試のご相談を受けたとき、私は先に「今回は何を知りたいですか」と聞くようにしていました。この質問に答えられるご家庭は、模試の名前を挙げなくても候補が絞れます。答えに詰まるご家庭は、模試の名前をいくつ並べても決まりません。おすすめを聞かれているのに質問で返すのは失礼かとも思ったのですが、目的が決まらないまま受けた1回は、成績表が1枚増えるだけで終わってしまうのです。