「小学生のうちから模試って受けるものなんでしょうか」。これは中学生の保護者面談で、下のお子さんの話になったときによく出てきた質問でした。調べてみたけれど出てくるのは中学受験の話ばかりで、うちは公立中に進む予定なので当てはまらない気がする、と続きます。
実際に検索してみると、そのとおりの状態になっています。「小学生 模試」で調べても、並ぶのは中学受験を前提にした模試の説明です。中学受験をしない小学生が何を受けられるのかは、ほとんど書かれていません。けれども公立中に進む予定の小学生にも、受けられる模試はありますし、受け取れる情報もあります。ただし中学受験の模試とは、返ってくるものが違います。
この記事では、小学生の模試を「中学受験をするかしないか」という分岐で整理します。私の専門は高校受験の指導で、公立中に進んだあとの生徒を18年見てきました。中学受験の志望校別にどう対策するかや、どの模試が優れているかという話は扱いません。扱うのは、進路が分かれる前後で受ける模試がどう変わるのか、それぞれの結果から何を読むのか、いつから受け始めるのかです。
この記事のサマリー
- 2つの系統:小学生の模試は、中学受験をする場合の合否判定型と、しない場合の学力測定型に分かれます。比べる相手も出題範囲も別です
- 中学受験の模試:おすすめを一つに決める形にはなりません。志望校の層と地域で候補が変わり、首都圏と関西圏では主要な模試の顔ぶれ自体が違います
- 全国模試:受験の有無を問わず誰でも受けられる全国規模のテストがあり、どちらの系統でも入口になります
- 判定が出ない結果の読み方:中学受験をしない場合は、順位・偏差値・単元別の正答率と、その推移を見ます
- 開始時期:中学受験をする場合は小4から小5に1回目を置くのが一般的で、合否判定の参考になるのは小5からです。しない場合は学年の区切りに合わせます
- 中学受験を決めていない場合:分岐の前でも受けられる模試があります。臨海セミナーは中学受験科と小学部でコース自体が分かれており、小学部の小学生りんかい公開テストは塾外生も受験できます
目次
小学生の模試は中学受験をするかしないかで2つの系統に分かれる
小学生が受ける模試には、性格の違う2つの系統があります。一方は中学受験をする小学生が受けるもので、志望校を登録して合格可能性の判定を受け取ります。もう一方は中学受験をしない小学生が受けるもので、学年全体の中で自分がどのあたりにいるかと、どの単元が定着していないかを見ます。後者に合否判定は出ません。判定を出す相手がいないからです。
この2つを分けているのは、答案を比べる相手です。中学受験の模試で比べるのは、同じ入試を受ける可能性のある層です。母集団は小学生全体ではなく、受験勉強をしている一部の層に絞られます。一方、中学受験をしない小学生が受けるテストで比べるのは、受験の有無を問わない同学年の層です。同じ答案を出しても、どちらの中で見るかで返ってくる偏差値はまったく違う数字になります。
もう一つ違うのが、出題される範囲です。中学受験の模試は、学校で習わない解き方を含む範囲から出題されます。いわゆる受験算数と呼ばれる領域がその代表で、塾のカリキュラムを前提にしないと手がつかない問題が並びます。中学受験をしない小学生が受けるテストは、学習指導要領の範囲を土台に作られており、学校の勉強を積み上げていれば解ける設計です。準備なしに前者を受けると、点数が取れないだけでなく、返ってきた数字の意味も読めません。
言い換えると、この2つは難易度の高い低いではなく、測っているものが別だということです。中学受験の模試で低い偏差値が出たとしても、同学年全体の中での学力が低いことを意味しません。逆に、学年全体を母集団にしたテストで高い偏差値が出ても、そのまま中学受験で通用する数字にはなりません。どちらの系統の数字なのかを確認せずに並べると、判断を誤ります。
したがって、小学生の模試を選ぶときに最初に決めるのは、どの模試を受けるかではありません。中学受験をするのかしないのか、まだ決めていないのか。この分岐が先で、模試の選択はその後に続きます。以降では、それぞれの系統に何があるのかを順に見ていきます。
この記事が扱う「小学生の模試」
ここで扱うのは、小学生が外部の団体や塾が実施するテストを受けて、自分の位置や弱点を知るための模試です。塾に通っている生徒が授業の理解度を確認するために受ける塾内のテストは、クラス分けや進度管理のための仕組みであり、この記事のいう模試には含めていません。また、中学受験のどの学校を目指すべきか、志望校別にどう対策するかは、この記事では扱いません。
中学受験の模試のおすすめは志望校の層と地域で変わる
中学受験の模試について「おすすめはどれか」と聞かれることがありますが、これは一つに決まる問いではありません。中学受験の模試は、想定している志望校の層ごとに難易度と母集団が作り分けられており、さらに首都圏と関西圏では主要な模試の顔ぶれ自体が違うためです。同じ小6でも、志望校の層と住んでいる地域が変われば、候補に挙がる模試が入れ替わります。
まず、志望校の層による分かれ方を整理します。
| タイプ | 想定している層 | 代表的な模試 | 返ってくるもの |
|---|---|---|---|
| 最難関校向け | 最難関校を目指す上位層 | サピックス「サピックスオープン」 | 難度の高い出題での得点と、上位層に絞った母集団の中での位置 |
| 中堅から上位校向け | 幅広い層。最も標準的な指標として使われる | 四谷大塚「合不合判定テスト」/日能研「全国公開模試」 | 志望校ごとの合格可能性判定と、受験者数の多い母集団での偏差値 |
| 適性検査型 | 公立中高一貫校の受検を含む層 | ONETES(旧首都圏模試センター)の適性ONEテスト/日本教材出版の公中検模試など、適性検査の形式に対応した回 | 教科型とは別形式の設問での得点と、その形式での判定 |
| 誰でも受けられる全国規模 | 受験の有無を問わない小学生全般 | 四谷大塚「全国統一小学生テスト」/日能研「全国テスト」 | 全国順位・偏差値・分野別の正答率。合否判定ではない |
表の上3つは中学受験を前提にした模試で、いちばん下だけが性格の違うものです。順に見ていきます。
志望校の層で分かれる──最難関向け・中堅から上位校向け・適性検査型
中学受験の模試を難易度の順に並べて「上から順に良い模試」と考えるのは、読み方としては正しくありません。模試は、その難易度帯の中で差がつくように作られています。最難関校向けの模試は、上位層の中で順位が割れるように難度を上げてあります。そこに標準的な層の受験生が入ると、多くの問題が解けないまま終わり、返ってくるのは「下位である」という情報だけになります。どこが弱いのかという肝心の情報が取れません。
逆に、上位層が標準的な難易度の模試を受けると、多くの受験生が正解する問題が並ぶため、得点が満点近くに張り付いて差が出ません。この状態でも、志望校に届いているかどうかの判断材料にはなりにくくなります。選ぶ基準は「難しいかどうか」ではなく、自分の得点が真ん中あたりに来る難易度かどうかです。
中堅から上位校を目指す層にとって標準的な指標として使われているのが、四谷大塚の合不合判定テストと日能研の全国公開模試です。いずれも受験者数が多く、志望校ごとの合格可能性判定が出ます。日能研の全国公開模試では、合格可能性80パーセントの水準を示す偏差値が学校ごとに示される形が知られています。受験者数が多いということは、母集団が実際の受験層に近くなるということでもあります。
公立中高一貫校を受検する場合は、また事情が変わります。公立中高一貫校の選抜で課されるのは教科ごとの試験ではなく適性検査で、複数の教科をまたいだ資料の読み取りや記述が中心になります。教科型の中学受験模試で高い偏差値が出ていても、適性検査の形式で得点できるかは別の問題です。適性検査の形式に対応した回を選ばないと、本番と同じ土俵で測ったことになりません。私立と公立中高一貫を併願する場合は、両方の形式を受けておく必要が出てきます。
適性検査の形式に絞った専用の模試もあります。日本教材出版が主催する公中検模試がその一つで、対象は小学5年生と小学6年生、会場受検と自宅受検のどちらかを選ぶ形です。東京版・神奈川県版・横浜市立版のように志望校の出題に合わせたテストタイプが用意されており、塾を通しても個人でも申し込めます(2026年9月時点の公中検模試センターの案内)。主催者の日本教材出版は、年間のべ5万名が利用する適性検査専用の模試だと説明しています。注意したいのは、母集団が公立中高一貫校を目指す層に絞られている点です。教科型の中学受験模試とは比べる相手が違うため、両方の偏差値を並べて高い低いを論じても意味がありません。
地域で分かれる──首都圏の主要模試と関西圏の主要模試
中学受験の模試は、地域によって主要なものの顔ぶれが変わります。中学入試は都道府県をまたいだ全国一律の制度ではなく、地域ごとに受験できる学校の顔ぶれも入試日程も違うためです。判定を出すには、その地域の学校を志望する層が十分な人数で集まっている必要があります。
首都圏では、先に挙げた四谷大塚・日能研・サピックス・ONETES(旧首都圏模試センター)の模試が主要なものとして扱われ、四大模試という呼ばれ方をすることもあります。関西圏では顔ぶれが変わり、五ツ木・駸々堂の中学進学学力判定模試が広く受験される標準的な判定模試として位置づけられ、最難関校を目指す層には浜学園の公開学力テストが選ばれる、という形が一般的です。近畿圏の学校を対象にした模試を実施している塾もあります。
ここで注意したいのは、検索結果に出てくる情報が、必ずしも自分の地域のものとは限らないことです。中学受験の模試について書かれた記事の多くは首都圏を前提にしています。関西で受験する家庭が首都圏向けの記事を読んで模試を選ぶと、志望校の判定が出ない模試を主軸にしてしまうことがあります。模試を探すときは、その模試が自分の志望校の判定を出しているかを、公式サイトの対象校一覧で確認してください。
なお、地域をまたいで受験する場合や、地方から首都圏・関西圏の学校を受ける場合は、会場が近くにあるかも確認が必要です。会場受験ができない場合に自宅受験の枠が用意されている模試もありますが、その場合は本番の緊張感や時間配分を体験するという目的は達成できません。
誰でも受けられる全国模試は小学生のどの層でも入口になる
ここまでの3タイプとは別に、中学受験をするかどうかにかかわらず受けられる全国規模のテストがあります。代表的なのが四谷大塚が主催する全国統一小学生テストで、年長から小6までを対象に、受験料が無料で実施されています。年2回、例年6月と11月ごろに全国の会場で行われ、小1から小3は算数・国語の2科目、小4から小6は算数・国語・理科・社会の4科目、または算数・国語の2科目を選ぶ形が案内されています。日能研も、全国の小学生を対象にした無料の公開テストを実施しています。
この種のテストは、母集団が受験勉強をしている層に限定されません。参加する層は幅広く、その中での全国順位や偏差値、分野別・設問別の正答率が返ってきます。合否判定は出ませんが、そのぶん受ける前に決めておくことが少なくて済みます。志望校を登録する必要も、受験するかどうかを決めておく必要もありません。
そのため、このタイプは両方の系統の入口になります。中学受験を考えている家庭にとっては、本格的な判定模試に入る前の様子見の場になりますし、中学受験をしない家庭にとっては、学校のテスト以外で学力の位置を知る数少ない機会になります。まだ決めていない家庭にとっては、分岐のどちら側にも寄せずに受けられる選択肢です。
無料で受けられる模試には、この種の全国規模のものだけでなく、塾が入塾希望者向けに開放しているものや、期間限定で無料になるものなど、いくつかの成り立ちがあります。無料であることの意味は成り立ちによって違うため、模試の種類ごとの整理は模試の種類を会場・自宅・オンラインで整理した記事にまとめています。
中学受験をしない小学生が受けるのは学年全体を母集団にした学力テスト
公立中学校に進む予定の小学生にも、受けられるテストはあります。返ってくるのは志望校の合格可能性ではなく、同学年全体の中での位置と、単元ごとにどこが定着していないかという情報です。進学先が決まっているから測る必要がない、ということにはなりません。むしろ、学校のテスト以外に外部の物差しがないぶん、意識して機会を作らないと自分の位置がわからないまま小学校を終えることになります。
小学校のテストは、その単元を授業で扱った直後に、学級の中で実施されます。多くの児童が高い得点を取る設計になっているため、80点や90点が並んでいても、それが同学年の中でどのあたりなのかは見えません。学校のテストで測れるのは「習ったことが身についたか」であって、「同学年の中でどこにいるか」ではありません。この2つは別の情報です。
公立中に進む小学生が受けられる模試にはどんなものがあるか
現実的な選択肢は、大きく2つあります。
1つは、前の章で触れた全国規模の無料テストです。全国統一小学生テストや日能研の全国テストは、中学受験をするかどうかを問わずに受けられます。学年も年長や小1から対象になっている回があり、低学年のうちから受けられるのが特徴です。受験勉強をしていない状態で受けても、順位と偏差値、分野別の正答率が返ってきます。
もう1つは、学習塾が実施している公開テストです。中学受験を扱う塾のテストとは別に、公立中学校に進む予定の小学生を対象にしたコースを持ち、そのコース向けのテストを塾外の小学生にも開放している塾があります。この種のテストは、学習指導要領の範囲を土台に作られているため、受験算数の準備をしていなくても解けます。塾に通っていなくても申し込める回が設けられていることが多く、受験料が無料になる招待回が用意されている場合もあります。具体的にどう組まれているかは、この記事の後半で臨海セミナーと他塾の例を挙げます。
どちらを受ける場合も、確認しておきたいのは母集団です。そのテストを受けているのが誰なのかで、返ってくる偏差値の意味が変わります。中学受験を目指す層が中心のテストであれば、公立中に進む予定の小学生の偏差値は実際より低めに出ます。逆に、その塾のコース生だけが受けているテストであれば、母集団は塾のカリキュラムを受けている層に限られます。どちらが良い悪いではなく、数字を読むときに前提として知っておく必要がある、ということです。母集団によって偏差値がどう変わるのかという仕組みそのものは、模試とは何かを扱った記事で整理しています。
なお、外部生を受け入れているかどうかは、塾が実施するテストごとに扱いが違います。特定の回だけ開放している場合や、学年を限って募集している場合もあります。申し込みの前に、その回の実施要項を確認してください。
合否判定が出ない結果から何を読むか
合格可能性の判定が出ない成績表は、一見すると読みどころが少なく感じられます。実際には、読める情報は3つあります。
1つ目は、同学年の中での位置です。順位や偏差値がこれにあたります。ここで大事なのは、1回分の数字を単独で見ないことです。偏差値50という数字は、平均のあたりにいるという以上のことを教えてくれません。意味を持ち始めるのは、2回目以降に前回と比べられるようになってからです。年に1回でも継続して受けていれば、学年が上がるにつれて位置がどう動いているかが見えます。
2つ目は、単元別・分野別の正答率です。これが合否判定の出ないテストで最も使える情報です。成績表には、どの分野の問題で何問正解したか、受験者全体の正答率はどれくらいだったかが載っています。見るべきなのは、間違えた問題そのものではなく、「全体の正答率が高いのに自分は間違えた問題」です。多くの児童が正解できている問題を落としているということは、その単元の理解に穴が空いている可能性が高いということです。逆に、全体の正答率が低い問題を落としていても、優先度は下がります。
3つ目は、テストという形式そのものへの慣れです。決められた時間の中で、初めて見る問題を、知らない場所で解く。この経験は学校のテストでは積めません。小学生のうちに何度か経験しておくと、中学に入ってから受ける模試や定期テストで、形式に戸惑う分の目減りが減ります。
この3つは、中学に進んでから受ける模試でも読み方の軸は変わりません。むしろ中学以降のほうが、志望校の判定が加わるぶん情報量が増えます。中学生になってからの模試をいつからどう受けていくかは、中学生の模試を学年別に整理した記事で扱っています。小学生のうちに成績表の読み方に慣れておくと、そのまま中学以降に引き継げます。
小学生の模試はいつから受けるか──2つの系統で開始時期の考え方が違う
開始時期についても、2つの系統で考え方が変わります。中学受験をする場合は入試日という締め切りから逆算する形になり、しない場合は締め切りがないぶん、学年の区切りに合わせる形になります。同じ「小学生の模試はいつから」という問いでも、答えが分かれるのはこのためです。
受験する側の目安──小4・小5に1回目を置く
中学受験の模試は、小4または小5から受け始めるのが一般的とされています。小3から受けられる回が用意されている模試もありますが、多くの家庭が本格的に受け始めるのは小4以降です。
ただし、受ける目的は学年で変わります。小4から小5の段階では、年に1回から2回、あるいは数か月に1回程度の頻度で、テストの雰囲気に慣れることと、今の実力を測ることが主な目的になります。この時期の判定はまだ動きます。合否判定が参考として意味を持ち始めるのは小5の模試からで、それ以前の回は判定を見るより、受けること自体に慣れる回だと考えたほうが実態に近くなります。
小6になると位置づけが変わります。夏以降は月に1回程度のペースで受けるのが一般的で、志望校の合格判定の精度も上がってきます。この時期は、直近の仕上がりを確認しながら志望校を固めていく段階になります。
逆算すると、小6の夏に月1回のペースに入る前に、成績表の読み方と会場の雰囲気に慣れておく必要がある、ということになります。小4・小5に1回目を置くのは、判定を早く知るためではなく、判定が重要になる時期に読み方を覚える段階を持ち込まないためです。
受験しない側の目安──学年の区切りに合わせる
中学受験をしない場合、入試という締め切りがありません。そのため「いつまでに何回」という逆算が成り立たず、代わりに学年の区切りを目安にする形になります。
現実的なのは、年に1回から2回、同じ時期に受け続けることです。全国規模の無料テストは例年決まった時期に実施されるため、その回に合わせておけば、毎年同じ条件で比べられます。時期を毎回変えてしまうと、学習が進んだぶんなのか、位置が動いたのかが切り分けられません。
始める学年については、低学年から受けられる回もありますが、無理に早める必要はありません。小学校の学習内容が積み上がってくる小4以降であれば、単元別の正答率から読み取れることが増えます。それより前の学年で受ける場合は、位置を測るというより、テストの形式に触れる機会として考えておくと過度な期待をせずに済みます。
また、公立中に進む場合は、中学に入ってから高校受験に向けた模試が始まります。小学生のうちの受験は、その前段階として位置づけられます。小学生のうちに毎回受けなければ後れを取る、という性質のものではありません。
まだ決めていない場合──分岐の前に受けられる模試から入る
中学受験をするかどうかを決めていない段階でも、受けられる模試はあります。むしろ、決めるための材料として使えます。
この段階で選ぶなら、志望校の登録を必要としない全国規模のテストが向いています。受験するかどうかを表明しないまま受けられ、返ってくるのは同学年の中での位置と分野別の正答率です。中学受験をすると決めてから受け始める必要はありません。
ただし、この結果だけで中学受験の向き不向きを判断するのは避けてください。全国規模のテストは学習指導要領の範囲を土台にしており、中学受験で問われる受験算数のような領域は含まれていないためです。ここで良い数字が出たことは、中学受験の勉強に対応できることを保証しません。逆に、思ったほど数字が出なかったことも、中学受験に向かないことを意味しません。測っている範囲が違うものを、判断の根拠にしないということです。
決めるための材料として使うなら、数字そのものより、受けたあとの様子を見るほうが実際的です。初めての場所で時間を区切られて問題を解くことに、本人がどう反応したか。返ってきた成績表を一緒に見たときに、間違えた問題に興味を持ったか。こうした反応は、点数より先に見えてきます。



中1で入ってきた生徒の中に、小学生のときに模試を受けた経験がある子とない子がいました。差が出たのは学力ではなく、最初の成績表を見たときの反応です。経験がある子は、どこを見ればよいかを知っているので、返却されたその場で自分の弱いところを指さします。初めての子は、まず数字の意味を聞くところから始まります。小学生のうちに1回でも受けておく価値は、この差にあると思っています。
開始時期について押さえておくこと
ここで挙げた学年や頻度は、一般的に案内されている目安です。実施時期・対象学年・受験料・申し込み方法は模試ごとに異なり、年度によっても変わります。特に無料で実施されている回は、対象学年や申し込み期間が回ごとに設定されていることがあるため、受験を検討する際は必ず各模試の公式サイトで最新の実施要項を確認してください。
コース設計そのものが2系統に分かれている例──臨海セミナーの模試体系
ここまで、小学生の模試は中学受験をするかしないかで2つの系統に分かれると書いてきました。この分岐は、模試を選ぶ側だけの問題ではありません。小学生を受け入れる塾の側も、同じ分岐でコースを分けています。その構造がわかりやすい例として、神奈川発の大手である臨海セミナーの小学生向けの体系を見てみます。
臨海セミナーは、小学生のコースを中学受験科と小学部の2つに分けています。中学受験科は国私立中学の受験や公立中高一貫校の受検を目指すクラス、小学部は中学受験ではなく高校受験を目指す小学生のクラスです。この記事で整理してきた分岐が、そのままコースの分かれ目になっている形です。
そして、受けるテストも系統ごとに別になっています。中学受験科では、塾内の組分けテストやマンスリーテストに加えて、中学受験 合格ONEテスト、合不合判定テスト、全国統一小学生テストといった外部の模試が体系の中に組み込まれています。前半で挙げた主要な模試を、自塾のカリキュラムの計測点として使う形です。中学受験の模試が塾のカリキュラムを前提にした設計になっているという話は、この組み込み方を見るとわかりやすくなります。
一方、小学部のテストは3層に分かれています。毎回の授業で前回の内容と宿題を確認する小テスト、通常授業のまとめとして実施するりんかいマスターテスト、そして学期ごとのまとめとして実施する小学生りんかい公開テストです。りんかいマスターテストは全生徒が受験するため大きな母集団の中での位置が出る仕組みで、個人成績表には得点・平均点・偏差値が示されます。実施は4月・6月・夏期・10月・11月・冬期・2月で、2月は小5のみが対象です。
このうち小学生りんかい公開テストは、りんかいマスターテストより難度が高く設定され、平均点が60点前後になるように作られています。前半で「得点が真ん中あたりに来る難易度を選ぶ」と書きましたが、平均点を先に設計しているテストは、その条件を最初から満たしていることになります。個人成績表では算数・国語の領域ごとの弱点が示され、高得点者は小5・小6を対象としたチャンピオン大会に招待される仕組みです。
そしてこのテストは、臨海セミナーに通っていない小学生も無料で受験できます。対象は公立中学校に進学予定の小学3年生から小学6年生です。中学受験をしない小学生が外部の物差しを持ちにくいという、この記事で挙げた問題に対して、通塾していなくても使える選択肢が用意されている形になります。
ただし、日程・会場・対象学年・申し込み方法は年度や地域によって変わります。受験を検討する際は、必ず最新の実施要項を公式サイトで確認してください。また、どの模試を使う場合でも、返ってきた数字は指標の一つであり、1回の結果で進路の方向を決めるものではありません。



著書のご案内
受験・学校選び ── 元教室長が教える後悔しない塾の決め方
小学生の段階で塾を検討する場合、コースが進路のどちらを前提にしているかを最初に確認する必要があります。書籍では塾の選び方を扱いましたが、面談では「このコースは中学受験と高校受験のどちらを前提にしていますか」と聞いてみると、その塾の設計がはっきりします。
小学生のコースはどう分かれているか──湘南ゼミナール・ステップ
小学生のコースを進路で分ける考え方は、臨海セミナーに限ったものではありません。ただし分け方は塾によって違い、その違いが受けられるテストの違いにもつながります。神奈川県内で高校受験を扱う代表的な2社を挙げておきます。
湘南ゼミナールは、小学生向けに総合進学コースを設けています。ここで実施されているのが小学生実力判定テストで、湘南ゼミナールの生徒だけでなく複数の学習塾に通う小学生が受験する形をとっています。個人成績表では全国順位や偏差値のほか、科目ごとの単元別正解数や平均点との比較が示されます。対象は公立中学校に進学予定の小学生で、通っていない小学生を無料で招待する回も設けられています。中学受験をしない小学生に向けた外部の物差しを、塾の側から開いている形です。
ステップは、神奈川県内に絞って教室を展開する塾で、対象学年を小5から高3までとしています。小1から小4は学童教室として別に運営されており、小学生の通常のコースは小5から始まります。中学受験は扱っておらず、高校受験と、小5・小6を対象とした公立中高一貫校の対策に絞った構成です。小学生の授業は学校の内容より少し先を進み、定着の確認は定期的なまとめテストで行う形をとっています。進路の分岐でいえば、最初から公立中に進む側に構成を寄せている例だといえます。
3社に共通しているのは、小学生を一括りにせず、進路の分岐でコースを分けている点です。違うのは分け方で、両方の系統を持つ塾、公立中に進む側にテストを開いている塾、公立中に進む側だけに絞っている塾があります。小学生の段階で塾を検討する場合は、コース名だけでなく、そのコースがどちらの進路を前提にしているかを確認してください。なお、外部生が受けられる回の有無や無料招待の扱いは年度によって変わることがあるため、申し込みの前に直接ご確認ください。
よくある質問(FAQ)
決められません。想定する学校のレベル帯ごとに出題の難度と受験者層が作り分けられているうえ、住んでいる地域によって候補に挙がる模試そのものが入れ替わるからです。順序としては、まず公式サイトの対象校一覧で志望校の判定が出るかを確かめ、そのうえで自分の得点が真ん中あたりに来る難度のものを選びます。難度は上げるものではなく、合わせるものだと考えてください。
必須ではありませんが、受ける価値はあります。小学校のテストは習った直後に学級の中で実施されるため、同学年全体の中での位置が見えないからです。外部のテストを受けると、順位や偏差値に加えて、単元別の正答率から定着していない範囲がわかります。合否判定は出ませんが、位置と弱点を知るという目的であれば、中学受験をしない小学生でも同じように使えます。
中学受験用の模試は小学4年生から受けられるものが中心で、小学3年生から受けられる回もあります。ただし、合否判定が参考として意味を持ち始めるのは小学5年生の模試からとされています。それ以前の回は、判定を見るというより、テストの雰囲気に慣れることと今の実力を測ることが主な目的になります。対象学年は模試ごとに違うため、申し込み前に実施要項を確認してください。
読むところは3つあります。同学年の中での位置(順位・偏差値)、単元別・分野別の正答率、そしてテスト形式そのものへの慣れです。最も使えるのは2つ目で、全体の正答率が高いのに自分が間違えた問題を優先して見ます。多くの児童が正解している問題を落としている場合、その単元の理解に穴がある可能性が高いためです。位置については、1回分ではなく継続して受けて推移で読みます。
無料で実施されているものがあります。四谷大塚の全国統一小学生テストは受験料が無料で、年長から小学6年生までを対象に年2回、例年6月と11月ごろに実施されています。日能研も全国の小学生を対象にした無料の公開テストを実施しています。一方、塾が主催する判定模試には有料のものが多くあります。無料か有料かは模試ごとに違い、年度によっても変わるため、公式サイトで確認してください。
同じものでは足りません。公立中高一貫校で課されるのは適性検査と呼ばれる形式で、問われ方が教科の試験とは異なるためです。算数や国語といった科目の枠に沿って出題されるとは限らず、与えられた資料をもとに考えを書く設問が中心になります。この形式に慣れているかどうかは、教科型のテストの数字には表れません。適性検査に対応した回を用意している模試を探してください。私立を併願するなら、両方の形式を経験しておくことになります。
他の模試と難易度を直接比べる形にはなりません。公中検模試は公立中高一貫校の適性検査に対応した専用の模試で、受検するのは公立中高一貫校を目指す小学5年生と小学6年生に絞られるためです。教科型の中学受験模試とは母集団が違うので、返ってきた偏差値を並べても意味を持ちません。見るのは、その集団の中で自分がどのあたりにいるかと、資料の読み取りや記述でどこを落としたかです。
まとめ
小学生が受ける模試は、中学受験をするかしないかで2つの系統に分かれます。中学受験をする場合に受けるのは、志望校を登録して合格可能性の判定を受け取る模試です。中学受験をしない場合に受けるのは、学年全体の中での位置と単元ごとの定着を見る学力テストで、合否判定は出ません。分けているのは答案を比べる相手と出題される範囲で、難易度の高い低いではなく、測っているものが別だということです。
中学受験の模試について、おすすめを一つに決める形にはなりません。志望校の層ごとに難易度と母集団が作り分けられており、最難関校向け、中堅から上位校向け、適性検査型という分かれ方があります。さらに首都圏と関西圏では主要な模試の顔ぶれ自体が違います。選ぶ基準は難易度の高さではなく、自分の得点が真ん中あたりに来る難易度かどうかと、志望校の判定が出るかどうかです。
中学受験をするかどうかを問わず受けられる全国規模のテストもあり、どちらの系統でも入口になります。四谷大塚の全国統一小学生テストは年長から小6まで無料で受験でき、日能研も無料の全国テストを実施しています。合否判定は出ませんが、順位・偏差値・分野別の正答率が返ってきます。中学受験をしない場合は、全体の正答率が高いのに間違えた問題を優先して見ると、埋めるべき穴が絞り込めます。
開始時期は、中学受験をする場合が小4から小5に1回目を置くのが一般的で、合否判定が参考として意味を持つのは小5からです。小6の夏以降は月1回程度のペースに入ります。中学受験をしない場合は締め切りがないため、年1回から2回を同じ時期に受け続けて、学年をまたいだ推移で読む形になります。まだ決めていない場合は、志望校の登録を必要としない全国規模のテストから入れます。
塾の側も、同じ分岐でコースを分けています。臨海セミナーは中学受験科と小学部を分け、中学受験科では合不合判定テストや全国統一小学生テストを体系に組み込み、小学部では小テスト・りんかいマスターテスト・小学生りんかい公開テストの3層を持っています。小学生りんかい公開テストは平均点が60点前後になるよう作られ、公立中学校に進学予定の小3から小6であれば、通っていなくても無料で受験できます。中学受験をしない小学生が外部の物差しを持ちにくいという問題に対する、通塾なしで使える選択肢の一つです。
小学生のうちに受けた模試は、そのまま中学以降につながります。成績表のどこを見ればよいかを先に知っている生徒は、中学で最初の模試が返ってきたその場で自分の弱いところを指せます。小学生の段階では回数を積むことより、読み方に慣れることのほうが効きます。


元教室長の視点
藤原 誠一|日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー
高校受験でも同じことが起きるので、模試選びの相談を受けるたびに申し上げていたことがあります。難しい模試を受けたほうが力がつくと考えて、得点が半分に届かない模試を選び続けるご家庭がありました。返ってくる成績表は毎回ほぼ同じで、どこを直せばよいかがわかりません。得点が真ん中あたりに来る模試を選ぶと、同じ1回でも読み取れる情報が一気に増えます。難易度は上げるものではなく、合わせるものだと考えてください。