「塾の模試の結果が良くないのですが、これは受験で通用しないということでしょうか」。教室長として保護者面談に立っていた18年間、成績表を持ってきたご家庭からよく受けた質問がこれでした。逆に「塾の模試ではいつも上位なので安心しています」というお話も、同じくらい聞きました。
どちらの場合も、まず確認していたのは同じことです。その成績表は、どの模試の、誰と比べた数字なのか。塾で受けた模試には性格の違う2種類があり、返ってくる数字の意味がまったく違うからです。
この記事では、塾内模試と外部模試が何によって分かれるのかを整理したうえで、塾に通っている中学生と通っていない中学生それぞれの組み立て方、そして2つの数字が食い違ったときの読み方までを、元教室長で日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザーの藤原 誠一が中学生向けに解説します。
この記事のサマリー
- 塾の模試とは:通っている塾が関わる模擬試験の総称です。その塾の生徒だけが受ける塾内模試と、塾が主催して塾外の生徒にも開いている公開模試の2つを含みます
- 塾内模試:その塾の生徒だけが受ける模試です。塾のカリキュラムや進度に合わせて出題され、日頃の学習の定着度を確認するために実施されます
- 外部模試:通っている塾の外の主催者が実施し、その塾の生徒でなくても申し込める模試です。入試の出題形式と全範囲を基準に作られます
- 3つの違い:誰と比べた数字か・誰が問題を作ったか・結果が誰に届くか。この3点が変わるため、返ってくる数字の意味が変わります
- 使い分け:志望校の合否判定は外部模試の数字で見ます。塾で習った内容が定着しているかどうかは、塾内模試のほうが正確に測れます
- 塾に通っていない場合:塾外生の受験を受け付けている公開模試があります。臨海セミナーの神奈川統一模試のように、塾に通っていなくても県内での位置と志望校判定を受け取れる模試が選択肢になります
目次
「塾の模試」は2つある──塾内模試と塾が主催する公開模試
「塾の模試」という言葉は、性格の違う2つのものを指しています。その塾の生徒だけが受ける塾内模試と、塾が主催して塾外の生徒にも開いている公開模試です。成績表を見るときに最初にすべきなのは、手元の数字がどちらのものかを確かめることです。
塾に通っていない中学生から見ると、この2つはさらに立場が変わります。他塾が主催する公開模試は、自分にとっては塾の外で実施される模試、つまり外部模試です。まず3つを並べて整理します。
| 比較軸 | 塾内模試 | 塾が主催する公開模試 | 塾以外が主催する模試 |
|---|---|---|---|
| 受けられる人 | その塾の生徒のみ | その塾の生徒と塾外の受験生 | 申し込めば誰でも |
| 母集団 | その塾の生徒 | その塾の生徒+塾外の受験生 | その入試を受ける受験生 |
| 問題を作る人 | 通っている塾 | 主催する塾 | 出版社・模試センターなど |
| 志望校判定 | 出ないことが多い。出る場合も塾内の基準 | 出る(模試の母集団と過去データが基準) | 出る(模試の母集団と過去データが基準) |
| 申し込み | 塾が一括で実施 | 塾経由または個人 | 個人または塾経由 |
| 中学生向けの代表例 | 塾ごとの月例テスト・カリキュラムテスト | 臨海セミナーの神奈川統一模試・駿台中学生テスト | 県内特化模試・東進の全国統一中学生テスト |
この記事で外部模試と呼ぶのは、右の2列です。通っている塾の外で実施され、その塾の生徒以外も受ける模試を指します。他塾が主催する公開模試も、自分がその塾に通っていなければ外部模試にあたります。
模試の主催者にどんな類型があるかは、主催者による3類型(塾・予備校/出版社・模試センター/通信教育事業者)を扱った記事で整理しています。この記事は、そのうえで自分がその塾に通っているかどうかという一点で線を引き直したものだと考えてください。
「どこで受けたか」では塾内模試と外部模試は分けられない
塾の教室で受けた模試がすべて塾内模試だと思われがちですが、そうではありません。塾の教室を会場にして実施される外部模試もありますし、自宅に問題冊子が届いて自宅で解く塾内模試もあります。分ける基準は受けた場所ではなく、誰が主催し、誰が受けているかです。
受験する場所や方法による分け方は、これとは別の軸になります。会場・自宅・オンラインという受験形式の違いについては、模試の種類を受験形式で整理した記事で扱いました。同じ模試を会場で受けても自宅で受けても、それが塾内模試か外部模試かは変わりません。
塾内模試と外部模試の3つの違い
塾内模試と外部模試の違いは、誰と比べた数字か・誰が問題を作ったか・結果が誰に届くかの3点です。この3つが同時に変わるため、同じ「模試」という名前でも、成績表から読み取れることがまったく違います。どちらかが優れているのではなく、測っているものが違うと考えてください。
順番に見ていきます。
違い1:誰と比べた数字か──母集団が「その塾の生徒」か「その入試を受ける層」か
塾内模試の母集団は、その塾に通っている生徒です。外部模試の母集団は、その模試を受けた受験生全体で、県内特化の模試なら県内の受験生、全国模試なら全国の受験生になります。
ここで注意したいのは、母集団の大きさよりもその集団がどうやって集まったかです。塾の生徒は、入塾テストを設けている塾なら一定の水準以上がそろいますし、難関校志望者が集まる塾なら全体が上位に寄ります。地域密着で幅広く受け入れている塾なら、その地域の平均に近い分布になります。いずれにしても、入塾という選択を経た集団で、学校のクラスのように自動的に決まる集団とも、受験生全体のように誰でも入る集団とも性質が違います。
だから塾内模試で偏差値50なら、それは「その塾の真ん中」であって「受験生の真ん中」ではありません。上位層が集まる塾で偏差値45だった生徒が、県内特化の外部模試を受けたら偏差値58だった、ということは実際に起こります。学力が急に上がったのではなく、比べている相手が変わっただけです。
この違いが最も強く出るのが志望校判定です。塾内模試は志望校判定を出さないことが多く、出す場合もその塾の過去の合格実績を基準にしています。外部模試の判定は、その模試の母集団と、過去に同じ模試を受けた受験生がどこに合格したかという追跡データから算出されます。神奈川県のように高校ごとに内申点と学力検査の比率が決まっている入試では、その計算式に当てはめて判定を出す模試もあります。
母集団が塾の中に閉じていると、この計算の土台になるデータがそろいません。志望校に届いているかどうかの判断を塾内模試の数字で行わないのは、こうした理由からです。
違い2:問題を作った人と教えた人が同じか
2つ目の違いは、あまり意識されませんが、成績表の読み方に直接効いてきます。塾内模試は、教えた側が問題を作っています。授業をした塾が、その授業で扱った内容をもとに出題する。授業とテストが一つの中で閉じている構造です。
これには利点があります。出題範囲が塾のカリキュラム進度と正確に一致するので、教えたことが身についたかどうかを精密に測れます。失点した箇所は、そのまま「先月扱った単元が定着していない」と読めます。範囲が絞られているぶん、求められる正答の精度は高くなることもあります。
同時に限界もあります。作問する側は、生徒が何をどこまで習ったかを知っています。そのため、習っていない切り口や、見たことのない設定の問題は入りにくい。入試本番で通用するかどうかは、構造的に測りにくいということです。
外部模試は逆です。作問者は指導の外側にいて、受験生一人ひとりが何を習ったかを前提にできません。基準になるのは、その入試で実際に出る出題形式と全範囲です。中3の秋以降の模試であれば、中1の内容から中3の内容まで、どこから出てもおかしくありません。初見の設定で問われることも普通にあります。
教室長時代、塾内模試ではほぼ満点なのに外部模試で崩れる生徒が毎年いました。原因を追っていくと、単元の知識が抜けているのではなく、初めて見る形式に対応する練習が足りていないことがほとんどでした。これは塾内模試では見つけられない穴です。
違い3:結果が誰に届き、何に使われるか
3つ目は、結果のその後です。塾内模試の結果は塾に蓄積され、指導計画やクラス編成、面談の資料として使われます。答案は講師が直接見ることを前提に作られていて、採点した講師がそのまま次の授業の内容を調整することもあります。
つまり塾内模試の結果は、成績表という形だけでなく、次の授業が変わるという形でも返ってきます。返却が早いことが多いのも、指導に反映する前提で運用されているからです。
外部模試の結果は、原則として本人と家庭に返ります。塾に通っていれば塾にも共有されますが、主催者は指導者ではないため、成績表を受け取ったあと何をするかは受験者側に委ねられます。詳細な単元別の正答率が出るのは、自分で分析することが前提になっているからです。
実務的な意味は単純です。塾内模試の失点は講師に持っていくと最短で埋まります。作った人と教えた人が同じなので、どこでつまずいたかを説明する必要がありません。一方、外部模試の失点は自分で分析して、必要なら塾や学校に持ち込む一手間が要ります。この手間を惜しむと、外部模試は「判定を見るだけの行事」になってしまいます。
塾に通っているかどうかで組み立てが変わる
塾内模試と外部模試の組み立て方は、塾に通っているかどうかで変わります。塾に通っていれば2つを役割で分けて使い、通っていなければ外部模試だけで組み立てます。当たり前のようですが、この前提が違う人向けの説明を読んでしまうと、必要のない準備をすることになります。
塾に通っている場合──測るものを分ける
塾に通っていれば、塾内模試は自動的に受けることになります。そこに外部模試をどう組み合わせるかが論点です。
基本は測るものを分けることです。志望校に届いているかどうかの判断は外部模試の数字で行い、塾で習った内容が定着しているかどうかの確認は塾内模試で行う。この役割分担が決まっていれば、2つの成績表を同じ土俵で比べる必要がなくなります。
塾内模試を軽く扱う必要はありません。返却が早く、答案を作った講師に直接聞ける環境がある模試は、外部模試にはない強みを持っています。直近に習った単元の穴を埋めるという用途では、外部模試より速く正確に働きます。
一方で、塾内模試だけで受験期を通すと、受験生全体の中での位置がわからないまま志望校を決めることになります。外部模試を節目で加えて、県内や全国での位置を確認する必要があります。多くの塾は主要な外部模試を一括で申し込んでいるので、まずは通っている塾がどの外部模試を扱っているかを確認するのが早道です。扱っていない場合でも、個人で申し込める模試は複数あります。
塾に通っていない場合──外部模試だけで組み立てる
塾に通っていない中学生には、そもそも塾内模試という選択肢がありません。受けるものはすべて外部模試になります。組み立ての考え方は変わります。
まず、定着度の確認を担う模試がない状態から始まります。塾内模試が担っていた「直近に習った単元が身についているか」の確認は、学校の定期テストと自分の演習で代替することになります。外部模試の成績表に出る単元別の正答率も、この用途に使えます。
そのうえで、外部模試を主軸に据えます。選ぶときの基準は、その模試の母集団が、自分の志望校を受ける層と重なっているかどうかです。神奈川県の公立高校が第一志望なら、神奈川県の受験生が広く受けている模試のほうが、全国一律の基準で判定する模試より実態に近い数字が返ってきます。
「塾に通っていないと塾の模試は受けられないのでは」と思われがちですが、塾が主催する模試の中には塾外生の受験を受け付けている公開模試型のものがあります。塾に通っていなくても、県内の入試制度に合わせた志望校判定を受け取れる選択肢があるということです。具体的な例は次の章で扱います。
費用面が気になる場合は、無料で受けられる模試もあります。ただし「無料」の性格は一様ではなく、誰でも無料のものと、通信教育の受講者にとって追加料金がないだけのものが混在しています。この違いは無料模試の3類型を整理した記事で扱っているので、申し込む前に確認してください。
塾内模試と外部模試で数字が食い違ったらどう読むか
塾内模試と外部模試で数字が食い違ったときは、どちらかが間違っているのではなく、測っているものが違うと考えます。そのうえで、志望校に届いているかどうかの判断には、母集団が塾の外に開かれた外部模試の数字を使います。食い違い方には3つのパターンがあり、それぞれ次にすることが違います。
塾内模試は良いのに外部模試が振るわない
最も多い相談がこれでした。原因は1つではなく、前の章で挙げた違い1と違い2が同時に効いていることがほとんどです。
母集団の面では、その塾の中では上位でも、受験生全体では真ん中ということがあります。作問の面では、習った範囲を前提に作られた問題では取れても、初見の設定や広い範囲からの出題では取れないということがあります。この2つは対処が違うので、切り分けが必要です。
切り分けの手順はこうです。外部模試の成績表で単元別の正答率を見て、特定の単元だけが落ちているなら知識の穴です。単元に偏りがなく全体的に低いなら、初見の形式への対応か、時間配分の問題である可能性が高くなります。前者は塾内模試の得意分野なので、講師に持っていけば埋まります。後者は外部模試を継続して受けること自体が練習になります。
どの外部模試を主軸に置くかで、返ってくる数字の意味も変わります。神奈川県の高校受験を前提にした模試の選び方は、神奈川で受けるべき模試の記事で整理しています。
塾内模試は振るわないのに外部模試は良い
このパターンは、違い2で説明した作問の性質から説明できます。塾内模試は塾のカリキュラム進度に沿って出題されるので、直近に扱った単元の定着が弱いと点が下がります。外部模試は入試の全範囲から出題されるため、直近の単元が占める割合は相対的に小さくなります。
つまり塾のカリキュラムに対する遅れであって、入試学力そのものの問題ではないことが多いということです。悲観する必要はありませんが、放置もできません。直近単元の未定着は積み上がると後で効いてきます。
幸い、このパターンは対処が最も簡単です。塾内模試の失点範囲は直近の単元に限定されているので、どこを埋めればよいかがはっきりしています。答案を作った講師に持っていけば、その場で原因まで特定できます。
両方とも下がった
塾内模試も外部模試も同時に下がったときは、違い3で挙げた塾内模試の性質が最も役に立ちます。答案を講師が直接見ているという点です。
確認したいのは3つです。どこかの単元に穴があるのか、時間配分で最後まで解ききれていないのか、体調や当日の環境といった一時的な要因なのか。この切り分けは、点数だけを見ていてもできません。答案そのものを見る必要があります。
塾に通っていれば、この作業を講師と一緒にできます。通っていない場合は、外部模試の答案の写しと成績表を突き合わせて自分で行うことになります。どちらの場合も、1回の結果で判断せず、次の回の推移まで見てから動くのが原則です。

著書のご案内
受験・学校選び ── 元教室長が教える後悔しない塾の決め方
塾内模試の結果を返却したあと、塾がそれをどう指導へ反映するかは塾によって差があります。書籍でも第13章「模試の選び方 ── 本番で失敗しないために」で扱いましたが、体験や面談の場で「塾内のテストの結果は、そのあと何に使われますか」と聞いてみると、その塾が模試をどう位置づけているかが見えてきます。
塾の模試なのに母集団が塾内に閉じない例──臨海セミナーの模試体系
塾が主催する模試の中には、母集団が塾内に閉じないものがあります。塾外生の受験を受け付けている公開模試型の模試です。神奈川発の大手である臨海セミナーの模試体系が、この形の例になります。
臨海セミナーの神奈川統一模試は、中1の3月から中3の12月まで継続して受けられる神奈川特化の模試です。特徴は判定の出し方にあります。成績と模試の結果を神奈川県の公立高校選抜方法の計算式に当てはめ、高校ごとに設定された内申点と学力検査の比率にもとづいて志望校判定を行います。神奈川県の入試は学校ごとに比率が違うため、全国一律の基準で判定する模試よりも、実際の合否の構造に近い数字が返ってきます。特色検査も実施されます。
中3の直前期には、公立入試型の臨海模試が12月・1月に行われます。神奈川では特色検査模試も実施されるため、志望校が特色検査実施校であっても同じ体系の中で対策を完結させられます。中1から中3の直前期までを一つの流れで通せる設計だということです。
返却後の扱いも仕組みとして用意されています。進路指導は「入試情報センター」という専門部署に集約された入試情報にもとづいて行われ、高校進学資料の編集や、公立・国私立の学校情報、高校ごとの合格ラインの提供が行われています。前の章で書いたとおり、外部模試の失点は自分で分析して次につなげる一手間が要ります。塾の側にその往復を支える仕組みがあるかどうかは、確認する価値があります。
そしてこれらの模試は、臨海セミナーに通っていない中学生も受験できます。塾に通わずに高校受験に向かうご家庭にとって、県内の入試制度に合わせた判定を受け取れる選択肢のひとつになります。この記事の言葉で言えば、塾が主催していながら母集団が塾内に閉じていない模試、ということです。
ただし、模試の日程・会場・対象学年は年度や地域によって変わります。受験を検討する際は、必ず最新の実施要項を公式サイトで確認してください。また、どの模試を使う場合でも判定は指標の一つであり、1回の結果で志望校を決めるものではありません。
塾生以外から見た他塾の模試──湘南ゼミナール・ステップ
神奈川県内で高校受験を扱う塾は臨海セミナーだけではありません。模試の位置づけは塾によって異なるため、代表的な2社の考え方を挙げておきます。
湘南ゼミナールは神奈川県の公立高校入試に特化したカリキュラムを持つ集団指導塾です。授業での理解、宿題での定着、小テストでの計測を繰り返しながら、定期テストと模試を経て入試につなげるという流れをカリキュラムの中に組み込んでいます。模試を単体のイベントとしてではなく、日々の学習サイクルの計測点として位置づける考え方です。
ステップは神奈川県内に絞って教室を展開する集団指導塾で、塾生向けの情報紙やオリジナルの入試情報冊子、志望校別の進学ガイダンス、定期的な保護者面談といった情報提供の仕組みを持っています。模試の結果を進路の判断につなげる部分を、面談とガイダンスで支える形です。
ステップは、オープン模試と特色検査対策模試について一般生の受験料を塾生とは別に設定しており、塾生以外も申し込めます。申し込みは各スクールの窓口で受け付ける形です(2026年9月時点の模試案内)。湘南ゼミナールについては、通年で外部の中学生が単独で申し込める公開模試の案内は、模試・イベント情報で確認できる範囲では見当たりませんでした。つまり同じ塾の模試でも、外部から受けられるものと、その塾に通っていない中学生から見れば塾内模試にあたるものが混在しています。塾に通っていない状態で判定を受け取りたい場合は、外部生の受験を受け付けている塾の模試か、出版社・模試センターが主催する公開模試が現実的な選択肢になります。各塾の模試を受けられるかどうかは年度によって扱いが変わることもあるため、直接問い合わせて確認してください。
よくある質問(FAQ)
塾の模試とは、通っている塾が関わる模擬試験の総称で、その塾の生徒だけが受ける塾内模試と、塾が主催して塾外の生徒にも開いている公開模試の2つを含みます。塾内模試は塾のカリキュラムや進度に合わせて出題され、公開模試は入試の出題形式と全範囲を基準に作られます。同じ「塾の模試」という言葉でも、返ってくる数字の意味が変わります。
どちらか一方を優先するのではなく、測るものを分けます。志望校に届いているかどうかの判断は、母集団が塾の外に開かれた外部模試の数字で行います。塾で習った内容が定着しているかどうかの確認は、進度に合わせて出題される塾内模試のほうが正確です。塾に通っていない場合は、外部模試だけで組み立てます。
塾のテストの難しさは、問題そのものより誰が作ったかで意味が変わります。塾内模試は通っている塾が授業で扱った内容を前提に作るため、範囲が絞られる代わりに求められる精度が高くなることがあります。外部模試は入試の全範囲から初見の設定で出題されるため、範囲の広さで難しく感じます。難しさの種類が違うだけで、どちらかだけが本当の学力を示しているわけではありません。
偏差値が違うのは、比べている母集団が違うからです。塾内模試の偏差値はその塾の生徒の中での位置を、外部模試の偏差値はその模試を受けた受験生全体の中での位置を示します。塾の生徒は入塾の経緯である程度そろった集団なので、塾内模試の偏差値50は「その塾の真ん中」であって「受験生の真ん中」ではありません。志望校の判断には外部模試の偏差値を使います。
あります。塾が主催する模試の中には、塾外生の受験を受け付けている公開模試型のものがあります。臨海セミナーの神奈川統一模試がその例で、神奈川県の公立高校選抜方法の計算式に当てはめた志望校判定を受け取れます。ただし塾内模試はその塾の生徒だけが対象のため、通っていない場合は受けられません。実施要項は年度によって変わるため、公式サイトで確認してください。
塾が主催する公開模試の結果は志望校選びに使えます。母集団が塾の外に開かれていて、志望校を登録して合格可能性判定を受け取れるためです。一方、その塾の生徒だけが受ける塾内模試の結果は、母集団が塾内に限られるため志望校選びの主軸には使いません。塾内模試は、直近に習った単元が定着しているかを確認する用途に向いています。
まとめ
塾の模試は、その塾の生徒だけが受ける塾内模試と、塾が主催して塾外の生徒にも開いている公開模試の2つを指します。塾内模試と外部模試の違いは、誰と比べた数字か・誰が問題を作ったか・結果が誰に届くかの3点です。この3つが同時に変わるため、返ってくる数字から読み取れることが変わります。
使い分けの原則は、測るものを分けることです。志望校に届いているかどうかの判断は、母集団が塾の外に開かれた外部模試の数字で行います。塾で習った内容が定着しているかどうかの確認は、進度に合わせて出題され、答案を講師が直接見る塾内模試のほうが正確です。2つの数字が食い違ったときは、どちらかが間違っているのではなく、測っているものが違うと考えて、外部模試の単元別正答率から原因を切り分けます。
塾に通っていない中学生にも、県内での位置と志望校判定を受け取る手段はあります。臨海セミナーの神奈川統一模試のように、塾が主催していながら塾外生の受験を受け付けている公開模試があるためです。神奈川統一模試は中1の3月から中3の12月まで受けられ、神奈川県の公立高校選抜方法の計算式にもとづいて志望校判定を出します。日程や対象学年は年度で変わるため、公式サイトで最新の実施要項を確認してください。
そして、外部模試で受け取った偏差値と判定を志望校の選択につなげるときは、志望校の側の数字も並べて見る必要があります。神奈川公立上位5校を横断で見ると、同じ偏差値帯でも学校ごとに求められる内申の重さや選抜比率は異なります。志望校を絞る段階では、神奈川公立上位5校の偏差値と対策の横断比較もあわせて確認してください。
塾内模試と外部模試のどちらが正しいのかと聞かれると、私はいつも「両方とも正しくて、答えている質問が違うだけです」と伝えていました。塾内模試が答えているのは「この2か月で教えたことが身についたか」、外部模試が答えているのは「今の力で志望校に届くか」です。質問が違えば答えも違います。2つの成績表を並べて悩む時間があるなら、それぞれが答えている質問を書き出してみてください。次にやることが自然に決まります。


元教室長の視点
藤原 誠一|日本進学教育研究機構認定 高校受験指導アドバイザー
面談で成績表を並べたとき、保護者の方が最初に見るのは偏差値の数字でした。そこで私が必ず一緒に確認していたのは、その模試の受験者数と、どういう人が受けたのかという欄です。ここを見ないまま2つの数字を比べると、上がった下がったの話になってしまいます。塾内模試と外部模試は、そもそも別の物差しです。同じ目盛りで読もうとしないことが出発点になります。